アースデーにバーチャルで開催された気候変動サミットでは、アメリカが温室効果ガスの削減目標を2005年レベルの50%とし、それを30年までに達成するという大胆な宣言がニュースになりました。一方で、「環境的人種差別」が問題視されつつあります。
環境的人種差別は多くの場合、黒人やヒスパニックなどのピープル・オブ・カラーが住む地域と、白人が暮らすエリアが隔離されていることから起こります。たとえば、ゴミ廃棄場や工場の汚染物質の貯蔵施設は圧倒的にピープル・オブ・カラー居住地の近くに偏り、大気や水の汚染による体への影響だけでなく、メンタルにも影響を与えることも調査で明らかになっています。
同じ街でも非白人が住むエリアは、白人エリアより公園や街路樹が著しく少ないため、夏の気温が最高で5~6度高いことも分かっています。
こうした劣悪な環境と、慢性の内臓疾患や呼吸器病との因果関係も明らかになってきて、気候変動が進むにつれてその影響も大きくなると考えられているのです。
また今回のようなパンデミックで最も大きな打撃を受けているのも、こうした既往症を持つ人が多い黒人やヒスパニックです。コロナの死亡率は、黒人が白人の1.9倍、ヒスパニックは2.3倍に上っています。
環境的人種差別はアメリカだけの問題ではありません。マレーシアの巨大なゴミ集積場の半分は、アメリカやヨーロッパ、日本などの豊かな諸外国から運ばれたものです。インドネシア、タイ、ベトナム、インドなどの「グローバル・サウス」と呼ばれる発展途上国でも、同様の問題で多くのピープル・オブ・カラーが健康リスクを抱えて生活しています。
環境的人種差別は今後、国連の「SDGs」(持続可能な開発目標)とも関わり、世界の差別・人権問題としてクローズアップされてくると考えられます。
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