巣ごもりGWだからこそ知る「ピルの効能」

知っておくべき避妊薬としてのピルとコンドームとの関係

(C)Vladimir Sukhachev/iStock

 ピルが避妊薬であることはご存じでしょう。しかしピルには避妊や病気の治療のために毎日飲む低用量ピル、生理の移動に一時期のみ使う中用量ピル、緊急避妊に使うピル、など様々な種類があります。

 今日はこの中でもピルの代表選手である低用量ピルが避妊効果を発揮する仕組みについて説明します。

 低用量ピルにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンが含まれています。

 普段の生理周期では脳から卵巣に命令が出て、卵巣からホルモンが分泌され、排卵が起こります。しかしピルを飲んでホルモンが体の中に取り込まれると、脳は卵巣からホルモンが出ていると認識し、命令を出さなくなります。その結果、排卵が起きなくなり、避妊効果があらわれます。

■ピルは脳をだまして排卵をストップさせる「偽妊娠療法」

 この仕組みは妊娠した動物の卵巣からは排卵が起きず、次の妊娠が成立しないことをヒントに発見されました。つまりピルを飲むことで妊娠に似せたような状況を再現するので、「偽妊娠療法」とも呼ばれます。また、ピルに含まれるホルモンにはおりものをねばっこくして子宮内への精子の侵入を防いだり、子宮内膜を薄くして卵を着床させにくくしたりする効果もあります。

 ピルは「偽妊娠療法」と先ほど言いましたが、副作用も妊娠した場合とやや似ています。飲み続けていると吐き気がしたり、胸が張ったり、お腹が張ったりすることがあります。そこでこの副作用を解消するために21日間ピルを飲んだ後に7日間お薬を飲まない期間を作る低用量ピルの原型が開発されました。

 現在でも実薬を21日間程度飲んで、休薬(または代わりに偽薬を飲む)を7日おくことが最もスタンダードな避妊用のピルの飲み方です。休薬中の7日間には体の中でホルモンが急激に下がることで、子宮の内膜が剥がれ、出血が起こります。よってピルを飲んでいる間にも生理のような出血は月に1回程度起こります。

■避妊成功率99.7%でもセックスにコンドームは欠かせない

 では低用量ピルの避妊効果はどれくらいでしょうか。正しく服用できた場合の使用開始後1年間の避妊失敗率は0.3%で、たまに飲み忘れた場合も8%程度とされています。男性用コンドームでは2~15%、リズム法(排卵日を避けて性交をもつ)の場合は9~25%とされており、女性主体の避妊法として有効性が高いものと言えます。

 ただし、コンドームはピルに比べると避妊効果としては劣るとはいえ、大事な役割を持っています。それは性感染症の予防です。

 コロナの時代の今、症状はないけど自分が感染している可能性を考えマスクをすることが推奨されています。性感染症も新型コロナウィルス同様、感染していても自覚症状がない場合も多いのです。コンドームは性行為においていわばマスクの役割を果たすので、お互いを守るために必要です。

 またオーラルセックスが普及している現代では性感染症は性器から口腔内に感染することもあります。味付きのコンドームなども販売されています。極力粘膜同士が接触しないように役立てていきましょう。低用量ピルも飲み忘れなどがある場合は避妊失敗率が上がってしまいます。性感染症の予防も含めてコンドームの併用をおすすめします。

佐野靖子

佐野靖子

ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科医師。順天堂大医学部卒。同大産婦人科入局後、非常勤助教を経て現職。医学博士、日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会専門医。専門は更年期障害、女性のヘルスケア。

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