パワフルなハスキーボイスでおなじみの歌手の葛城ユキさんが、原発性腹膜がんだと報じられました。歌手の平浩二さんがくも膜下出血で緊急搬送されたことで、あすはわが身と心配されたのか、人間ドックを受診。ステージ4の腹膜がんが見つかったそうです。
「私は歌うために生まれてきております。必ずステージに復帰します。どんなに苦しくても、耐えます。ロック魂で頑張ります」
パワフルな歌声そのままに、闘病する決意を語っていたのが印象的でした。報道が流れた翌27日は青森で公演。5月1日から治療に専念するそうです。
腹膜は、肝臓や胃、大腸、小腸などの表面を覆う膜で、広げると畳1畳分の広さになります。そこから発生したがんの性質は、卵巣がんに近く、生検をして組織学診断をすると、ほとんどが卵巣がんと同じタイプに分類されます。
毎年新たに診断されるのは10万人当たり6人と非常にまれですが、腫瘍マーカーも卵巣がんと同じ数値が使われるため、現実的には卵巣がんの一種として扱ってよいと思われます。
早期はほとんど無症状で、進行するとお腹に水がたまることに伴う膨満感、腹痛や腰痛、排便の異常、不正出血などが見られます。これも卵巣がんと同じで、葛城さんのようにステージ4で発見されることが珍しくありません。早期発見が難しいことも、卵巣がんと似ています。
お腹の中の腫瘍を完全に切除することを目的に行う腫瘍減量術と抗がん剤が主な治療法で、これも卵巣がんと同じです。ただし、進行してからの発見が多く、最初に手術を行えないことも往々にしてあります。
報道によれば、葛城さんはなるべく手術を避けたいと考えていらっしゃるそうです。そんなケースは、まず抗がん剤で腫瘍を小さくしてから、手術に踏み切ることがあります。手術ができる状態になったら、手術を行い、さらに術後に抗がん剤を加えます。
卵巣がんは、婦人科系のがんの中でも、抗がん剤が効きやすい。ステージ3と4では、抗がん剤と手術の組み合わせが、とても重要です。
卵巣がんは、腫瘍が卵巣にとどまるステージ1でも、両側の卵巣と卵管のほか子宮を全摘。さらに胃の下部の脂肪組織、骨盤内リンパ節などを切除する大がかりなものです。
がんが下腹部から上腹部に進行しているケースでも腫瘍を取り切ることが、その後の余命を左右します。
ぜひロック魂でハードな闘病生活を乗り越えてほしいと思います。
Dr.中川 がんサバイバーの知恵