巣ごもりGWだからこそ知る「ピルの効能」

低用量ピルが「生理痛」や「子宮内膜症」に効くのはなぜ?

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 低用量ピルには生理痛を改善する作用があります。2008年には月経困難症の治療薬として承認され、保険適用薬として使用できるようになったことは以前の記事でも触れました。ただ特に未成年の患者さんの中には、家族に相談したところ反対されて…という方も少なくありません。そこで今回は「月経困難症や子宮内膜症の治療薬としての低用量ピル」にスポットを当てて、その効果と効能についてお話しします。

 低用量ピルの効果を理解するために、通常の生理周期の子宮内膜の変化について説明しましょう。通常の生理周期では生理が来ると、子宮内膜は次の排卵に備えて徐々に増殖し、厚くなります。子宮内膜は妊娠した場合、赤ちゃんのベッドになる部分です。排卵が起きると、厚くなった子宮内膜は卵が着床し育ちやすいようにふかふかに成熟していきます。

 ただし大体の周期では妊娠は成立せず、子宮内膜は維持できなくなります。そこで不要になった子宮内膜は排出され、生理が起こります。つまり普段の生理周期では毎回妊娠した場合に備えて子宮内膜は厚くなります。この厚くなった内膜を排出するために子宮が過度に収縮すると生理痛が起こります。

 低用量ピルに含まれるプロゲステロンには子宮の内膜の増殖を抑える作用があります。生理が始まるのと同時に低用量ピルを飲めば、プロゲステロンの効果で子宮の内膜は普段より薄く保たれます。子宮の内膜が薄く保たれれば、生理の量は少なくなります。生理の量が少なくなれば、子宮は頑張って収縮しなくても済むようになり、生理痛は起こらなくなる。以上が低用量ピルが生理痛を改善させる仕組みです。

■治療目的で避妊が必要ない人にも使われる

 また低用量ピルは子宮内膜症の治療にも有効です。子宮内膜症は本来子宮の中にしか存在しないはずの子宮内膜が、子宮の外である骨盤内や卵巣に発生する病気です。病変の内膜も生理の度に局所で出血し、炎症を起こすため、痛みを伴います。低用量ピルに含まれるプロゲステロンには子宮内膜症の痛みを緩和させるとともに、病変を萎縮させる効果もあります。

 低用量ピルは子宮内膜症だけでなく、子宮腺筋症や子宮筋腫がある場合にもしばしば治療に用いられます。婦人科において治療薬としてのピルの重要性は年々高まってきており、ピル=治療薬という考え方に変わってきています。現在では治療を目的とする場合は、婦人科医は性交渉の有無に関わらず低用量ピルを勧めます。つまり避妊効果が必要でない人にも低用量ピルを出すことがあります。

 このことは婦人科に馴染みがない男性にとっては少し意外なことかもしれません。

佐野靖子

佐野靖子

ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科医師。順天堂大医学部卒。同大産婦人科入局後、非常勤助教を経て現職。医学博士、日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会専門医。専門は更年期障害、女性のヘルスケア。

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