巣ごもりGWだからこそ知る「ピルの効能」

ピルの副作用って実際のところどんなものがあるの?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 私は低用量ピルを飲んでいますが、婦人科医でピルを飲んでいるというとびっくりされることがあります。ピルに馴染みがないから、副作用やネガティブなイメージがあるのでしょう。

 しかしそんなイメージとは裏腹に私の周りの医療従事者でピルを飲んでいる女性はたくさんいます。メリットもデメリットも理解した上でピルを選ぶ女性が多いというのは、婦人科医にとっても励まされることです。

 そこで今日は「ピルを飲んでみたいけれど大丈夫?」と思っている女性や、「パートナーがピルを考えているけれど、心配だな」という男性に向けて低用量ピルの副作用についてご紹介しましょう。

 連載初回でも書きましたがピルは約60年前に初めてアメリカで発売されました。当時のピルは今の低用量ピルの5倍近い女性ホルモン量を含んでいて、吐き気をはじめとした副作用が強くでました。やがてホルモン量を減らすと副作用が軽くなることがわかり、低用量ピルが誕生しました。

■副作用はあるが、多くの女性はピルを継続できる

 低用量ピルには、「吐き気」以外にも「胸の張り」、「頭痛」、「下腹痛」、「むくみ」などの副作用があります。どれも飲み始めに一番強く、体が慣れると徐々に軽くなる傾向があります。

 私も飲み始めには「胸の張り」・「むくみ」を強く感じましたが、半年がたつとまったく気にならなくなりました。これらの副作用は軽度であれば、続けるうちに良くなることが多いのです。

 現在、婦人科の治療にはさらにホルモン量の低い超低用量ピルも使われていて、副作用はさらに出にくくなっています。実際にピルを処方する産婦人科医としてみていると、現在ではこれらの副作用が原因でピルを続けられない人の方が少ないと感じています。

■副作用による死亡率は転落事故や中毒による死亡と同程度のリスク

 ただしピルには重大な副作用もあります。「血栓症」といって、血管の中に血の塊ができる病気です。

 ピルを使っていない女性1万人が1年間に血栓症を起こす頻度は1~5人に対し、ピルを使っている女性では3~9人に増えます。もっとも、これってどのくらいなのかはピンときませんよね。そこで血栓症リスクが高いと言われる妊婦さんと比べてみましょう。

 妊婦さんの場合、1万人あたり1年間に29人が血栓症を起こすとされています。よってピルを使用している場合は妊婦さんの3分の1以下程度のリスクといえます。

 血栓症のほとんどは足の血管にできる血栓で治療を行えばとかすことができます。稀に血栓が肺の血管にとんでしまうこともありますが、これを含めたピルによる死亡率は年間10万人に1以下で転落事故や中毒による死亡と同程度の頻度です。

 ただし頻度が低いとはいっても血栓症は婦人科医が最も警戒する副作用です。そこで喫煙、肥満、高年齢など血栓症のリスクが高い場合はピルを飲めないケースもあります。またピルを処方する時には血栓症を起こしにくくするための予防方法や起きた時に早期発見するための指導も大切です。

 ピルを始める時にはかかりつけの婦人科を持ちましょう。何か心配なことがあれば相談にのってもらうことができる環境は大切です。

佐野靖子

佐野靖子

ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科医師。順天堂大医学部卒。同大産婦人科入局後、非常勤助教を経て現職。医学博士、日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会専門医。専門は更年期障害、女性のヘルスケア。

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