巣ごもりGWだからこそ知る「ピルの効能」

万一避妊の失敗に気づいたときに頼れる「アフターピル」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 気がついたらコンドームが破れてしまっていたとか、途中ではずれそうになったなど、避妊に関してヒヤリとした経験がある方は少なくないと思います。

 避妊手段が適切かつ十分でなかった性交のあとに緊急的に用いる方法を「緊急避妊」といいます。緊急避妊は性被害や低用量ピルの服用忘れの際にも用いられます。

 最近ではコロナ禍での望まない妊娠や医療機関へのアクセスも問題となり、緊急避妊薬の薬局販売の検討に向けて政府が舵を切ったことも話題になりました。

 そこで今日は現在日本で正式に承認されている緊急避妊法について説明します。

■72時間以内に飲めば妊娠阻止率は87.5%

 緊急避妊で一番用いられる方法が、「ホルモン剤の飲み薬」(アフターピル)を用いる方法です。性交後の72時間以内に「ノルレボ錠 1.5mg」を1錠、1回飲みます。現時点では医師が処方することが必要ですが、最近は後発品も承認されて値段も安くなりました。

 どうして妊娠が防げるのかは詳しくわかっていないものの、排卵を抑えたり、遅らせたりするのではないかといわれています。飲んだ場合の妊娠阻止率は87.5%(妊娠率は1~2%)程度です。性交から内服までの時間が短ければ短いほど効果は高くなります。飲むなら早めの受診をお勧めします。

 注意しなければいけないのは薬を飲んだ時点での妊娠は防げたとしても、生理が来る前に再び性交をすると、その時点で妊娠する可能性があります。実際に妊娠阻止率は飲んだ後に再び性交があった場合に下がってしまうことが知られています。

 次の生理が来るまでは禁欲する、どうしても禁欲できない場合は翌日から低用量ピルを飲み始めることも勧められています。副作用は一番多いもので吐き気・むかつきが2.25%程度ですが、吐いてしまうことはほとんどないようです。100%の効果ではありませんので、生理が予定日より1週間以上遅れた場合や普段より軽かった場合は妊娠検査をする必要があります。

■子宮内避妊具なら性交後120時間以内でも避妊可能

 もし性交後72時間たってしまった場合でも可能な緊急避妊法に銅付加子宮内避妊具(Cu-IUD)という方法もあります。これは子宮の中に銅が付加された避妊具を挿入するものです。銅イオンには精子の侵入を阻害したり、運動性を低下させる効果があります。また受精してしまった後でも卵の着床を妨げる作用もあるので、性交後120時間以内まで使用できます。

 妊娠の可能性を99%以上減らす事ができるとされていますが、出産の経験がない場合は入らないこともあるし、性感染症がある場合は避妊具と一緒に子宮の中に押し込んでしまう可能性もあります。挿入した後は月経量が増えたり、長くなったりする可能性もあります。ただ一度装着すれば2~5年程度まではその後の避妊にも使用できるため、中長期的に使用したい場合は適している方法です。

 緊急避妊はあくまで緊急的に行うものです。1年間を通じて妊娠阻止率が99%を超える低用量ピルに対し、レボノルゲストレルによる緊急避妊では服用1回の妊娠阻止率は87.5%です。パートナーがいる場合は、男性でも女性でも普段から避妊法について検討し、話し合っておきたいものです。

佐野靖子

佐野靖子

ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科医師。順天堂大医学部卒。同大産婦人科入局後、非常勤助教を経て現職。医学博士、日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会専門医。専門は更年期障害、女性のヘルスケア。

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