巣ごもりGWだからこそ知る「ピルの効能」

普通のピルと生理の移動に使うピルは何が違うの?

(C)torwai/iStock

 受験や旅行、スポーツ大会や音楽会などイベントの予定があるけど生理日と重なりそう、という経験は女性になら誰にでもあることです。そのときにピルを使った「生理移動」ができることをご存じでしょうか? 私も試験の際に「生理移動」をした経験があります。

■「生理移動」のピルと普段飲むピルとの違い

 ピルにはいくつか種類があって、生理の移動のために短期間使用するピルと普段から飲む低用量ピルは少し違っています。

 ピルはエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモン を含んでいます。女性ホルモンの量が多ければ、副作用も出やすくなります。そこでピルは歴史の中でホルモン量を少なくするように改良されてきました。現在では含まれるエストロゲンの量が50μg(マイクログラム)以上のものを高用量ピル、50μgのものを中用量ピル、50μg未満のものを低用量ピルと呼びます。

 生理の移動に頻繁に使用されるピルは50μgのエストロゲンが含まれている中用量ピルです。一方、治療や避妊のために毎日使うピルは20~40μgのエストロゲンが含まれている低用量ピルや超低用量ピルです。

 ではなぜ生理の移動に使うピルと普段から使うピルは違うのでしょうか。

 治療や避妊に普段から使用する低用量ピルの場合、生理の1日目から飲み始めて21日間程度続けます。生理直後から飲み始めるので比較的低い用量でも卵胞が育ち、排卵するのを抑えることができます。

 一方生理を移動させる、中でも1-2週間後に来る予定の生理を遅らせたい場合は生理予定日の5日前からピルを飲み始め、生理が来て欲しくない日まで続ける必要があります。この場合すでに排卵をしている時点からピルを飲むので、ある程度のホルモン量が入っていないと生理が来るのを抑えることができません。そこでホルモン量の多い中用量ピルを使います。

 ただこの場合飲み慣れないピルを飲みながら、旅行や試験などを迎えることになります。飲んでいる最中に気持ち悪くなって、支障が出てしまうこともあります。

■生理の移動は早めるのが断然おすすめ

 そこで余裕を持って予定がわかっている場合は、生理が来たらすぐに婦人科に行きましょう。そうすれば生理が来るのを早めることもできます。早める場合、生理が始まって5日以内から10日程度ピルを飲みます。飲み終わると3~4日程度で生理が起こり、本来は4週間後にくる生理を1週間程度早めることができ、大事なイベントの時にピルを飲んでいなくても大丈夫なのです。

 この方法は中用量ピルでも低用量ピルでも可能です。しかし確実に生理を早めたい場合、低用量ピルではホルモン量が低く、飲み終わった後にうまく出血が起こらないこともあります。そこで中用量ピルを用いることが多くなります。

 生理痛で悩む患者さんに低用量ピルをすすめると「前に生理の移動に使ったピルで気持ちが悪くなってしまったので飲めないと思う」と言われることがありますが、これには誤解があります。生理を移動する時に使う中用量ピルは低用量ピルよりもホルモン量が多く、副作用が出やすい傾向にあります。私も以前に生理を移動するために飲んだ中用量ピルは気持ち悪くなりましたが低用量ピルで気持ち悪くなったことはありません。

 生理移動のピルが合わなくてダメだったという方でも低用量ピルや超低用量ピルなら副作用が出にくい場合もあります。また、普段から低用量ピルを使用していれば、生理の移動もしやすくなります。困っている場合は婦人科で相談をしてみて下さい。=おわり

佐野靖子

佐野靖子

ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科医師。順天堂大医学部卒。同大産婦人科入局後、非常勤助教を経て現職。医学博士、日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会専門医。専門は更年期障害、女性のヘルスケア。

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