新型コロナウイルスのワクチン接種は医療従事者に続いて、65歳以上の高齢者向けの接種が始まっているが、アナフィラキシーショックといった「副反応」が心配で決めかねる人も多いだろう。奥田先生も4月下旬に1回目の接種を迎えたという。「筋肉注射なので少し痛みはありましたが、心配するような症状はありません」。今回は「副反応」について正しい知識を学ぼう。
【Q】「副作用」ではなく「副反応」と呼ぶのはなぜか
【A】「副作用とは治療薬を使用した時に起こる健康被害などの作用のことを指します。ワクチンの場合は接種した時の免疫が与えられる以外のアレルギー反応などのことを副反応と呼びます。ワクチンを打つと体内に異種タンパク質が入ることで体が反応して、炎症性サイトカイン(炎症反応を促進する働きを持つタンパク質)などを産生し、鼻水、発熱、体のだるさなどが生じます。これはワクチンそのものによる副次的なものではなく、免疫応答(外来の侵入者から身を守るために体内で起こる反応)によるものなので、『副反応』と呼びます」
【Q】ワクチンを複数回接種する場合、副反応が出やすいのは?
【A】「1度目の接種によって体内にある程度の免疫状態が作られるため、2度目の接種の時に強く出ることが一般的です。接種した人の免疫応答によって起きるので個人差があり、一人一人違うので完全にゼロにすることはできません。そのため、接種後は15~30分待機し、アレルギー反応が出れば対症療法を行います。一方で、『有害事象』と呼ばれるワクチンとの因果関係がはっきりしない症状が生じることもあります。たとえば、ワクチン接種後に頭痛がして、それが接種によるものか、ストレスや気圧の変化などによるものか、判別できない場合です。こうした概念も認識しておいてほしいです」
海外の報告によれば、ワクチンの副反応で多いのは打った筋肉部位の痛み(75%)、倦怠感(50%)、頭痛(44%)、発熱(25%)という。いずれも通常1~2日で治まる一過性のものとされている。
【Q】重篤なアナフィラキシーショックはどんな人に起こる可能性があるのか
【A】「アナフィラキシーショックは、アレルギー反応によって吐き気、血圧低下、意識障害、血中酸素濃度の急激な減少によるショック状態などが生じることを指しますが、ボスミンなどのアドレナリン注射やデカドロンなどのステロイド注射で症状は治まります。適切な薬剤投与が可能ですから、過剰に心配することはありません。ただし食物などのアレルギーがある人やアナフィラキシー経験者の一部に症状が出るという報告があるため、過去にアレルギーを経験した人は問診だけでなく、アレルギー検査も行っておくと安心でしょう」
【Q】新型コロナウイルスワクチン特有の副反応はあるのか
【A】「ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンに関していえば、現時点の報告から特有の副反応の心配はないでしょう。mRNAを脂質ナノ粒子で覆って投与するため、脂質ナノ粒子に対する反応として発熱が出る可能性はありますが、これは基本的に体内にある脂質と同質ですから、子宮頚がんワクチンなどと比べても重症な副反応は起こりにくいと考えます。また、筋肉注射は皮下注射よりも免疫応答が強くなるため、注射行為による反応が出ることはあります。腫れや筋肉痛、神経障害、全身倦怠感が出る可能性はあるが、症状が強ければカロナールなどの消炎鎮痛剤を使用すれば治まります」
英国のアストラゼネカ社製のワクチンは副反応の一部として血栓ができる可能性が指摘されるが、「抗凝固薬などの血栓を溶かす点滴などを処置して対処する」という。
いずれにしても、気になる人は接種前にかかりつけ医などに体質や持病を相談しておくといい。
新型コロナワクチンの疑問に答える