アッという間に診察は終了しました。A医師はすぐさま次の患者を呼びます。Kさんの場合と同じように採血の結果を見て、抗がん剤点滴を行うかどうかの指示を出し、そして次の患者に移るのです。
外来点滴室では、別の医師が抗がん剤点滴をしてくれます。Kさんも、A医師が忙しいのは分かっていて、その指示通りに動きます。しかし、今回は「次から抗がん剤をゲムシタビンに替えようと思う。それとも緩和にするかどうか、2週間後までに考えてくるように」と言われたのです。
Kさんはこれまで免疫チェックポイント阻害剤など、いろいろな薬物治療を行ってきました。A医師が「次はこれ、次はこれです」と決めてくれて、Kさんもがん拠点病院とA医師を信頼し、その通りに治療を受けてきました。しかし、今度はゲムシタビンか緩和かどちらかを選べと言うのです。
Kさんは、やれる治療法があるならやってほしいと考えています。ですから、ゲムシタビンを使ってほしいと思ってはいるのですが、それがどのくらい効くのか、緩和になったらこの先どうなるのか……外来診察では、とてもそんなことを尋ねる時間はないと感じていました。
がんと向き合い生きていく