がんと向き合い生きていく

医師から十分な説明を受けられず不安を抱える患者は多い

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 アッという間に診察は終了しました。A医師はすぐさま次の患者を呼びます。Kさんの場合と同じように採血の結果を見て、抗がん剤点滴を行うかどうかの指示を出し、そして次の患者に移るのです。

 外来点滴室では、別の医師が抗がん剤点滴をしてくれます。Kさんも、A医師が忙しいのは分かっていて、その指示通りに動きます。しかし、今回は「次から抗がん剤をゲムシタビンに替えようと思う。それとも緩和にするかどうか、2週間後までに考えてくるように」と言われたのです。

 Kさんはこれまで免疫チェックポイント阻害剤など、いろいろな薬物治療を行ってきました。A医師が「次はこれ、次はこれです」と決めてくれて、Kさんもがん拠点病院とA医師を信頼し、その通りに治療を受けてきました。しかし、今度はゲムシタビンか緩和かどちらかを選べと言うのです。

 Kさんは、やれる治療法があるならやってほしいと考えています。ですから、ゲムシタビンを使ってほしいと思ってはいるのですが、それがどのくらい効くのか、緩和になったらこの先どうなるのか……外来診察では、とてもそんなことを尋ねる時間はないと感じていました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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