身近な病気の正しいクスリの使い方

薬で下痢を止めると病気がかえって悪化する可能性がある

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写真はイメージ(C)PIXTA

 ストレスがかかりやすい季節の変わり目に、腹痛と同時に「下痢」になるという人も多いのではないでしょうか。そんなときには、下痢止め薬で一刻も早く止めてしまいたいと思うことでしょう。

 下痢止め薬は市販薬として販売されていて、「ストッパ下痢止めEX」などがそれにあたります。ここでいう下痢止めとは、腸の調子を整える整腸剤とは別物で、「ロートエキス」という成分を含んだ薬です。ロートエキスは、自律神経のうち副交感神経の働きを抑制することで腸の収縮を抑え、下痢を止めます。ただ、薬によって下痢を抑えてしまうことで、かえって病気を悪化させるケースがあるので注意が必要です。

 下痢を起こす原因のひとつである「感染性大腸炎」は、いわゆる食あたりというもので、飲料や食べ物から病原性の細菌が体内に入ることで引き起こされます。細菌が増殖して毒素を出し、腸内に障害や炎症が起こります。異物である毒素を体外に排出する体の防御反応として、下痢や嘔吐が表れるのです。

 下痢止め薬を使ってこの防御反応を抑えてしまうと毒素が体内にたまってしまい、かえって感染性大腸炎が長引く危険があります。ですから、水様性の下痢が長期間続いている場合を除いては、無理に薬で下痢を止めず、数日様子を見た方が早く治るケースもあるのです。その際は水分が抜けますし、食べ物も取りづらい状況なので、脱水症状にならないよう水分摂取を心がけましょう。水分と一緒に失われた腸内の善玉菌を整腸剤で補充することも大切です。

 ただし、症状が長引く場合、発熱や激しい腹痛がある場合には速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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