繰り返すつらい頭痛の原因は「帯状疱疹ウイルス」だった

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 近年、頭痛との関係性が指摘されているのが帯状疱疹ウイルスだ。重症例も含む頭痛患者が全国から集まる東京女子医科大脳神経外科頭痛外来客員教授の清水俊彦医師に話を聞いた。

 清水医師が「帯状疱疹ワクチン接種で群発頭痛の改善が認められた」という内容の発表を行ったのは、2019年11月の日本頭痛学会でのこと。

 清水医師はもともと、帯状疱疹ウイルスと群発頭痛が関係しているのではないかと考えていた。帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルス(帯状疱疹ウイルス)が原因で発症する。通常、水ぼうそうは子供の頃にかかるが、その時は治っても、帯状疱疹ウイルスが感覚神経節に潜んでおり、免疫力が低下した時に暴れだし、帯状疱疹の症状を呈する。

「群発頭痛の患者さんに予防治療として免疫力を下げる副腎皮質ホルモン剤を投与すると、群発頭痛の側と同じ三叉神経領域に帯状疱疹を発症するケースが多々あったことから、三叉神経に潜む帯状疱疹ウイルスが、帯状疱疹とならんで群発頭痛にも関係しているのではないかと考えました」

 清水医師は、群発頭痛患者27人の帯状疱疹ウイルス抗体価を測定。すると群発頭痛の発作後、3分の2以上で抗体価が上昇し、継続していた。これは、「群発頭痛の発作時に帯状疱疹ウイルスが再活性化している」ことを意味する。

 次いで、群発頭痛の発作時に帯状疱疹の治療で使う抗ウイルス薬を5日間投与。すると群発頭痛の発作期間が短くなった。

 そこで、帯状疱疹ワクチンを打った群発頭痛患者94人の追跡調査を行ったところ、36カ月後には71%の人が「改善した(発作が起きていない)」と回答し、54カ月後には99%の人に何らかの改善が見られた。

「群発頭痛だけではない。片頭痛にも帯状疱疹ウイルスは関係している可能性があります」

 片頭痛は、ズキズキと脈打つような痛みが繰り返し起こる。この片頭痛患者の50~80%に認められるのがアロディニア(異痛症)で、風が顔に当たった程度の、普段なら何とも思わないような刺激で痛みが生じる。

「群発頭痛と同様に、片頭痛でアロディニアが見られる患者さんには、三叉神経領域に帯状疱疹の症状が出る患者さんが少なくなく、そういう場合、帯状疱疹ウイルスの抗体価が上昇している。アロディニアは片頭痛の治療薬であるトリプタン製剤が効きづらいのですが、帯状疱疹治療で用いる抗ウイルス薬を5日間投与するとアロディニア症状が軽減しました」

■脳血管障害や認知症とも関係

 帯状疱疹ウイルスは頭痛以外にもさまざまな病気のリスクを高めることが近年、分かってきている。

 脳血管障害、アルツハイマー型認知症、多発性硬化症、顔面神経まひ、片側性眼瞼けいれんなどだ。清水医師の知人(50代)にも、頭部に帯状疱疹を発症した2週間後、脳の椎骨動脈解離を起こした人がいる。

「最初の帯状疱疹ではMRIは異常がなく、抗ウイルス薬で治りました。ところが2回目は、抗ウイルス薬では治りませんでした。私のところに連絡があり、すぐ来院してもらいMRIを撮ると、脳の椎骨動脈解離を起こしていたのです」

 即座に治療を開始したおかげで命に別条はなかった。治療後、帯状疱疹ウイルスの抗体価を調べるとやはり高く、帯状疱疹ウイルスが増殖していることが分かった。

 帯状疱疹ウイルスには増殖を抑制するワクチンがある。厚労省の承認は50歳以上だが、それ未満でも接種可能だ。

「少なくとも、群発頭痛や片頭痛を繰り返している人は帯状疱疹ウイルスへの免疫抗体を測定し、低ければ帯状疱疹ワクチンを検討した方がいい」

 つらい頭痛と手を切るために。

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