最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

在宅医療では医師もスタッフもすべてが対等なパートナー

写真はイメージ
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 在宅医療は「医師」だけでなく、「看護師」「言語聴覚士」「管理栄養士」「作業療法士」「理学療法士」など、さまざまなスペシャリストによって支えられていますが、特に私たち診療所ではそんなスタッフをまとめて「診療パートナー」と呼んでいます。

 そう呼ぶのは患者さんやご家族の前でも同じ。「看護師」や「言語聴覚士」といった特定の職種の名称は使わず、一律に「診療パートナー」として紹介しています。これは在宅医療を行うほかの医院でも、呼び名は違えど、ほぼ同じようにスタッフをまとめて呼んでいるところが少なくないはずです。

 なぜ各職種名ではなく、まとめてそう呼ぶのかというと、患者さんやご家族を前にしたときに、スタッフがすべて対等なのだという意識を全員で共有するためです。

 また、私たち各医療スタッフは、ただ治療するだけでなく、患者さんやご家族の要望や希望を聞きながら療養生活全般をサポートする“パートナー”であり、そして医師にとってもまた強力で同等の“パートナー”だからです。医師と、看護師をはじめとするスタッフとで構成されるヒエラルキーは在宅医療には不要なのです。

 病院では当然ながら医師も看護師もそのほかの医療スタッフも、患者さんの治療を第一に考えます。

 私たち在宅医療でも治療が必要な患者さんにはそれを重要視しますが、同時に生活の快適さも重要と考えます。

 診療パートナーとして働く看護師たちからは、「病院では限られたシフトの中でシステマチックに患者さんを診ていたのが、在宅診療では患者さんの生活や社会的な背景も含めて診ることができる。その人ならではの生き方をほかのスタッフと一緒に支えているということに、すごくやりがいを感じる。その分、プレッシャーもありますが」といった話をよく聞きます。

 病院では、医療スタッフがご家族と接するのはわずかな時間です。一方、在宅では本人はもちろん、ご家族の考えや不安に対しても納得してもらえるように丁寧に説明していきます。診療時間外に、医師や私たちスタッフとご家族が電話で話したりすることもあります。

 とことん話せるので、何が不安なのか、何を解決したら本人の希望をかなえられそうなのかを、じっくりと一緒に考えられます。現場を通じて在宅医療と病院との差異を感じているスタッフは少なくありません。

 ある患者さんにとって自分のことを熟知してくれているのは言語聴覚士かもしれませんし、別の患者さんは食事の好みを一番把握しているのが管理栄養士なのかもしれません。

 このように診療パートナーの各スタッフが、それぞれが持つ専門的な視点で患者さんの生活をさまざまな側面から診て、そこから出てきた提案を持ち寄り、すり合わせ、診察に反映させる。結果、患者さんやご家族にとって快適な在宅医療が実現するのです。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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