コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

デジタル療法「ニコチン依存症治療アプリ」はここがすごい

写真はイメージ
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 医薬品(薬)、医療機器(手術)に次ぐ、新たな治療法として注目されている「デジタル療法」。2014年の改正薬事法によって、ソフトウエア単体でも「医療機器プログラム」として保険の適用が可能になっている。その国内第1号が昨年11月に保険適用の了承を得た「ニコチン依存症(禁煙)治療アプリ」だ。

 どのように治療に役立てるのか。慶応義塾大学医学部と共同で開発したのは医療ベンチャー「CureApp(キュア・アップ)」(東京・中央区)。代表取締役社長の佐竹晃太医師が言う。

「ニコチン依存症は、離脱症状などの『身体的依存』と、『吸ったら気分がスッキリする』などの誤った認識を持つ『心理的依存』の2つの依存に悩まされます。身体的依存は、従来の禁煙補助薬による効果が期待できます。しかし、心理的依存は短い診療時間の中では十分な治療介入ができませんでした。このアプリは、その心理的依存の部分をカバーするのです」

 禁煙治療アプリは、従来の禁煙プログラムと組み合わせて使う。禁煙外来では、患者は3カ月間に5回診察を受ける。しかし、禁煙にくじけそうになるのは医師と対面している受診時以外のとき。その院外や在宅時の「治療空白」のときに、アプリが禁煙を毎日24時間サポートしてくれるのだ。

 具体的には、「患者用スマホアプリ」「医師用Webアプリ」「患者用の呼気一酸化炭素濃度測定器(COチェッカー)」という構成になる。治療を開始するときに、医師からログインに必要な処方コードを発行してもらい、それを患者がアプリに入力すると使用することができる。

「患者さんは、その日の気分や服薬状況などを入力し、COチェッカーに1日1回呼気を吹きかけます。そのデータを基に個々の患者さんに合わせた治療ガイダンスがアプリに配信されます。このように患者さんの生活習慣や行動を変える『行動変容』を促す治療アプローチができるのが最大の特徴です。これらのデータを医師と共有しながら治療を進めていきます」

 発売前の第Ⅲ相臨床試験では、通常の治療による禁煙率が50.5%だったところ、アプリを併用した場合の禁煙率は13.4ポイント向上したことが確認されている。また、アプリは治療終了後も3カ月延長して利用できるので、その後も高い継続禁煙率が維持できる。

 アプリにかかる治療費用は、3割負担で7620円。発売から3カ月ほどで、全国100施設以上の医療機関が導入しているという。

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