上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓マクロファージを利用した不整脈の治療は期待できる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 突然死の原因になるような重症な不整脈を自分の細胞で治せるようになるかもしれません。

 今年3月、東京大学、千葉大学、日本医療研究開発機構の研究グループが、「心臓の中に存在している免疫細胞のひとつ=心臓マクロファージが不整脈を予防している仕組み」を発見しました。

 心臓が血液を全身に送り出すポンプの働きをするためには、心筋細胞が収縮しなければなりません。心筋細胞は一個一個が「ギャップジャンクション」と呼ばれる小さな穴を通じてつながっていて、心筋細胞のひとつが収縮したあと、すぐに隣の心筋細胞が収縮することで正常な心臓の動きがつくられています。研究グループは、そのギャップジャンクションが正常に形成されるには、心臓マクロファージが必要であることを見つけたのです。心臓マクロファージが分泌する「アンフィレグリン」というタンパク質が、心筋細胞の表面にある上皮成長因子受容体を介して心筋細胞に正常なギャップジャンクションを形成するようにシグナルを伝え、心筋細胞同士が同期して収縮する仕組みを強化し不整脈を起こさせないようにしていることがわかったといいます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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