体に備わっている免疫機構によって、体内に戻された心臓マクロファージが「異常」と認識され、排除のために攻撃はされないまでも、血液の成分バランスを正常化するような形で心臓マクロファージを消滅させる方向に動く可能性もあります。その場合、効果は期待できず副作用だけが懸念される状況になってしまいます。
ただ、こうした課題があるのはたしかですが、iPS細胞に頼らない再生医療として大いに期待しています。患者さん自身の心臓マクロファージを使う自己組織由来の再生医療というものは、ヒトの体が作る人類共通の細胞を個人個人の病気に合わせて使う治療です。自分の細胞ではないiPS細胞を使う再生医療は少し足踏みしている状況ですが、今回の研究はそうした治療のボトルネックが開くきっかけになるかもしれません。
また、細胞という組織学の基礎研究と、不整脈という臨床をしっかり融合させることができれば、「トランスレーショナルリサーチ」の成功例となります。基礎研究で得られた成果を臨床に応用し、さらに臨床での結果を基礎研究にフィードバックして新しい医薬品や医療機器の開発につなげ医療の発展を目指すもので、「橋渡し研究」とも呼ばれています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」