男性の不妊症の原因の8割は精子を正常に作ることができない造精機能障害で、精巣内で元気な精子を作る機能が低下していると考えられている。その最も重篤な病態が無精子症だ。
「無精子症には精巣で精子は作られるものの、その通り道が何らかの原因で閉塞しているものを閉塞性(OA)と呼び、全体の20%を占めます。通り道に問題はないが精子がほぼ作られていないものが非閉塞性(NOA)で、こちらは全体の80%といわれています」
治療は局所あるいは全身麻酔による精巣内精子採取術(TESE)を行う。OA患者は陰嚢を皮膚切開して精巣の白膜を切り開き、その組織の一部を採取する。一方、NOA患者は精巣の白膜を大きく開いて手術用顕微鏡で精巣内をくまなく探索して精子を採取する。前者は日帰り手術、後者は入院手術が一般的だが、小林准教授が所属する東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターではどちらも日帰り手術で行っている。