2型糖尿病患者さんでは、甘いものが好きな方が珍しくありません。糖尿病専門医としては、甘いものはできれば控えめにしてほしいというのが、正直な気持ちです。
カロリーの問題もありますが、それ以上に、甘いものが血糖値の変動を大きくしてしまうことが多いからです。午前10時や午後3時などの“おやつタイム”に甘いものを食べると、朝食後や昼食後の血糖値のピークから、ちょうど血糖値が下がりかけてきたタイミングなので、それがまた急激に上昇してしまいます。
しかし甘いものが好きな方に、「甘いもの禁止」と言うのは酷。ストレスがたまって、ドカ食いにつながりかねません。また、「怒られるかも」と医師や栄養士に黙って甘いものを食べるようになれば、医師側からは血糖コントロール不良の真の原因がつかみづらくなり、薬の増量など不適切な治療を招くかもしれません。
そこで糖尿病患者さんには、「甘いものを取ってもいいけれど上手に取ってくださいね」と伝え、栄養士さんと一緒に実行可能な方法を探ってもらうようにしています。その方法は人それぞれ違うのですが、一般的に守ってほしいことは次の内容になります。
まず、甘いものは“おまけ”と認識する。ご飯やパンなどの主食、肉や魚などのタンパク質の主菜、野菜や海藻類、キノコ類や大豆類の副菜が並んだ食事をきちんと取った上で、おまけとして甘いものを取る。
本来は甘いもののカロリーも、糖尿病患者さんが目安とする一食の摂取カロリーに加えるべきですが、実行するのが難しい患者さんも多いので、“おまけ”という感覚で、取り過ぎない程度に取ってもらう。
食事代わりに甘いものを食べるのはNG。空腹時に甘いものを取ると、血糖値が急上昇します。食べるタイミングは、昼食後に少しがベターです。
次に、甘いものを買う時や食べる時は袋や包み紙の成分表示表を見て、カロリーをチェックする習慣を身に付ける。患者さんの中には「小さいからカロリーが低い」と思っている方もいるのですが、想像している以上にカロリーが高いものもあります。「これだけのカロリーを摂取しているんだ」という自覚を持つことが大事です。
さらに、すべての食事指導に通じるのですが、できそうなこと、変えられそうなことを1つでも2つでもいいから増やし、やめられることを1~2つ増やす。「変える」「増やす」「減らす」「やめる」の4つのキーワードの中から、それぞれ自分ができることを考えてトライしてみてください。
たとえば「変える」であれば、「おやつのケーキを低カロリーのゼリーに変える」「甘い缶コーヒーを自分で入れたブラックコーヒーに変える」。「増やす」なら「食事をしっかり取って、甘いものに手が出ないようにする」「おやつを食べない日を増やす」。
「減らす」では、「おまんじゅう2個を1個に減らす」「コーヒーに入れる砂糖の量を減らす」。「やめる」は「生クリームたっぷりのケーキをやめる」「パンにジャムを塗るのをやめる」。1つクリアしたら、また別の目標を掲げるのもいいですね。
糖尿病や肥満でなく、でも「甘いものもよく食べていますよ」という方のお話を伺うと、週末の家族と過ごす時だけ無糖のコーヒーや紅茶と一緒にクッキーをつまんだり、外食時や友達と会ったりした時だけケーキを食べたり……。「オン」と「オフ」の分かれ目がしっかりしている方が多いように思います。
だらだら何となく食べているのが一番良くない。ここぞ、という時だけ食べる方が、よりおいしく感じるかもしれませんよ。
進化する糖尿病治療法