がんと向き合い生きていく

「なぜ看護師になったのか?」コロナ病棟に勤務してから頭をよぎる思い

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 先月は、同じ病棟で一度に3人の看護師が職場を去っています。ひとりは出産で、ひとりはコロナ患者のいない病院へ移りました。もうひとりは、いったん看護師を辞めて故郷に帰るといいます。すぐに他の病棟から補充の看護師がやって来ましたが、コロナ病棟でのルールや感染防御について教えるのはいつも私の役目です。

 一日の勤務が終わり、重い感染防護服を脱いで寮の部屋に戻ると緊張から解き放たれますが、とにかく何もしたくなくてグッタリとしてしまいます。消化器内科病棟では感じたことのない、尋常ではない疲れ方です。ただ横になっていたい……そのまま寝てしまうこともあります。

 去年の12月、病院からいただいたボーナスが少ないことに愕然としました。コロナのために病院全体の患者数が減って、赤字が増えているというのです。私はお金には執着心はない方だと思っています。それでも今回は「こんなに働いてがんばっているのに……」と思うと、余計にめいってきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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