医者も知らない医学の新常識

アルツハイマー型認知症は初期なら薬で治る? 医学誌で報告

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 認知症は高齢化社会の最大の健康問題です。認知症の治療薬の研究は世界的に進んでいますが、今のところ確実に認知症を治すような薬や治療は見つかっていません。

 認知症の中で最も多いのは、アルツハイマー型と呼ばれるタイプの認知症で、アミロイドβ(ベータ)というタンパク質が、脳に蓄積することがその原因と考えられています。そのため、脳のアミロイドを減らすような薬が多く開発され、臨床試験までは行われていますが、今のところ確実に有効とされる結果は出ていません。

 その理由のひとつとして、これまでの新薬の臨床試験は、主に重症の患者が対象となっていたので、もう治療が間に合わなかったのではないか、という可能性が指摘されています。

 今年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンという一流の医学誌に、まだ軽い物忘れ程度の初期の認知症の患者に、脳のアミロイドを減らす抗体の注射薬を1年半使用した研究結果が報告されました。 

 それによると、治療により脳のアミロイドの蓄積は減少し、認知機能の低下は25から30%抑えられていました。ただ、それでも認知症の症状には、治療によるはっきりとした差は見られませんでした。今回の結果は初期の認知症であれば、改善する可能性を示した希望の持てるものですが、認知症が治るという目標は、まだまだ先のことであるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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