役に立つオモシロ医学論文

米国の主要死因ランキングで新型コロナ感染症が第3位に

新型コロナウイルスが猛威をふるったアメリカでは2020年平均寿命の低下が報告されている
新型コロナウイルスが猛威をふるったアメリカでは2020年平均寿命の低下が報告されている(C)AP=共同

 連日のようにメディアで報道される新型コロナウイルスの感染者数や重症者数、そして死亡者数ですが、この感染症の流行によって集団レベルでの死亡要因にどれほどの影響があったのでしょうか。米国における死因別死亡者数を取りまとめた論文が、米国医師会誌の電子版に3月31日付で掲載されました。

 この研究では、米国衛生統計センター(NCHS)の人口動態統計システム(NVSS)を用いて、死因別死亡者数の変化を調査しています。その結果、調査時点で入手できる情報に基づく暫定的な推計では、米国における死亡者数は2019年と比較して2020年で17・7%増加していました。2020年における主要死因ランキングでは1位の心臓病、2位の悪性腫瘍に次いで、新型コロナウイルス感染症が3位となっています(ちなみに2019年は不慮の事故が3位)。

 さらに心臓病による死亡者数は4・8%増加し、2012年以降で最大の増加となっていました。また、アルツハイマー型認知症や糖尿病による死亡者数も大きく増加していました。論文著者らは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医療の逼迫で、これら病気の診断や適切な治療の遅れが死亡者数増加を招いた可能性を指摘しています。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、国家レベルの死因別死亡者数の割合に小さくない変化が起きていたことは驚きです。米国では2020年1月から6月にかけて、平均寿命の低下が報告されており、こうした状況に見舞われるのは第2次世界大戦以来とのことです。日本では平年より死亡数が上回る「超過死亡」の報告はなされていませんが、今後も感染が拡大し続ければ米国と同様の事態が引き起こされるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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