心身不調の原因「梅雨疲労」をしっかり回復するための対策法

日照時間の減少も自律神経の乱れにつながる
日照時間の減少も自律神経の乱れにつながる(C)日刊ゲンダイ

 今年は全国的に記録的な早さで梅雨入りを迎えた。雨が増えて高温多湿の日が続くことで疲労がたまり、心身の不調を訴える人が多くなる。しっかり対策して乗り切りたい。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に聞いた。

 梅雨の季節に疲労が蓄積しやすくなるのは、自律神経のバランスが崩れてしまうからだ。

 自律神経は、体温、血圧、呼吸、心拍数、消化吸収、睡眠、摂食など、ヒトが生命を維持するための働きをすべてコントロールしている。

 活動時や昼間に活発になる「交感神経」と、安静時や夜に活発になる「副交感神経」の2つの神経系統で成り立っていて、そのバランスが崩れると、心身にさまざまな不調が表れる。

「『疲労』は、脳にある自律神経の中枢が酷使されて大きな負荷がかかることで生じます。そのまま自律神経に負担がかかり続けると生命活動をきちんと維持できなくなってしまうため、脳は『疲労感』を自覚させ、過剰な活動を抑えて自律神経の負担を減らそうとするのです。梅雨は、自律神経のバランスが崩れたり酷使される場面が多く、疲労がたまりやすくなる季節といえます」

 梅雨の季節は梅雨前線が南北を行ったり来たりを繰り返すため、気圧の変化が激しくなる。雨天時と晴天時、昼間と夜間などで気温の変化も大きく、その分、体を環境に適応させるために体温や血圧をコントロールしている自律神経はフル回転を強いられる。

 また、日照時間の減少も自律神経に問題を引き起こす。

「自律神経の働きを安定させる役割がある神経伝達物質『セロトニン』は日光を浴びることで生成されます。梅雨の時期は晴天が少ないため、セロトニンの分泌が減ってしまうのです。また、日照時間が短くなるとセロトニンの利用率が低下し、昼間に日光を浴び続けるとセロトニンの利用率がアップするという報告もあります。セロトニンがきちんと利用できなくなれば自律神経が不調を来し、疲労がたまっていきます」

 さらに、「隠れ脱水」にも要注意だという。

「脱水が発症の要因になる脳梗塞が最も多くなるのは梅雨の季節に該当する6月から7月にかけてです。気温がどんどん上昇しているのに、湿度が高いことで喉の渇きを自覚しにくいため、水分補給が不足して隠れ脱水になり、血液や体液の循環が悪くなる人が多いのです。自律神経は体内循環もコントロールしていますから、隠れ脱水の状態では負担が増大することになります。マスクを着用しているとさらに喉の渇きに気づきにくくなるので、コロナ禍が続く今年の梅雨はなおさら隠れ脱水に注意する必要があります」

■「トリプトファン」を減らさないよう注意

 蓄積しやすい梅雨の疲労を放置していると、不眠、めまい、抑うつ、消化器障害といった症状が悪化し、医療機関で治療を受けなければならないケースもある。

 しっかり対策しておきたい。

「まずは自律神経の働きを安定させるセロトニンを増やすために、その材料となる『トリプトファン』という必須アミノ酸を意識して摂取しましょう。トリプトファンは体内で生成できないため、食事から取る必要があります。豆腐や納豆などの大豆製品、牛乳やヨーグルトなどの乳製品に多く含まれ、米でも摂取できます。また、バナナはトリプトファンの含有量が15ミリグラムと多くはありませんが、合成を促進するビタミンB6も含まれるのでおすすめです」

 トリプトファンの1日の推奨摂取量は体重1キロ当たり4ミリグラムで、60キロの人は240ミリグラムになる。白米100グラムで82ミリグラム、木綿豆腐100グラムには98ミリグラム含まれているので、食事だけで十分に摂取できる。

「むしろトリプトファンを減らす成分に気をつけてください。『BCAA』と呼ばれる必須アミノ酸はトリプトファンを減らす作用があり、4グラム摂取するとトリプトファンの血中濃度が10分の1まで減少することがわかっています。プロテインの中にはBCAAが多く含まれているものがあるので、ダイエットなどの健康目的でプロテインを摂取している人は注意してください」

 トリプトファンに加え、朝目覚めたらカーテンを開けて光を浴びることを意識する。さらに、隠れ脱水を防ぐために喉が渇いていなくてもこまめに水分を補給することも大切だ。

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