進化する糖尿病治療法

アメ、ガム、コーヒー…知らず知らず取っている甘いものに注意

健康にいいと思っていることが逆効果
健康にいいと思っていることが逆効果

 糖尿病の方に多い“甘いもの好き”。「甘いものはおまけ」という感覚で、きちんと自覚して食べてください、と前回の連載で紹介しました。

 患者さんの中には、無自覚に甘いものを食べている方がかなりいます。いえ、甘いものと認識せずに食べていると言ったほうが正確かもしれません。

「甘いもの=スイーツ」ではないのです。ケーキやクッキー、おまんじゅうやお団子といった「いかにもスイーツ」的なものを食べる時、ほとんどの方が「甘いものを食べている」と自覚しているでしょう。ケーキを2個食べたら「食べすぎたな。主治医の先生に言ったら怒られるな」などと思うかもしれません。

 一方で、果物、メロンパンやクリームパンなどの菓子パン、キャンディーやガム、甘い缶コーヒーやジュースなどはどうでしょうか? 「甘いものを食べている」といった認識はないのでは?

「ビタミンや食物繊維が豊富だから毎日、果物を食べています」と言う患者さんは少なくありません。特に、テレビで「ビタミンCを摂取すると感染症にかかりにくくなる。ビタミンCはミカンやイチゴなどに豊富」といった取り上げ方をされると、「食後にミカン」「食後にイチゴ」という患者さんが増えます。ミカンは小さく、手軽に食べられますから、1日に2個も3個も食べる方もいます。イチゴにコンデンスミルクをかけて食べる方も。

 しかし、ミカンやイチゴといった果物は“甘いもの”と考るべき。近年は糖度の高い果物が多いですから、体にいいと思って食べていた果物が血糖コントロール不良を招いていたということはよくあります。

 パンも要注意。たいていのパンは製造過程で砂糖やバターを使っており、合わせるおかずもベーコンやスクランブルエッグなど高カロリーなものになりやすいので、主食としてはあまりお勧めできない。

 それが菓子パンとなると、もはや主食ではありません。フワフワのパン生地にサクサクのクッキー生地がかぶさっているメロンパンはカロリーが非常に高く、400~500キロカロリーほどあるものも。ご飯がお茶碗1杯(普通盛り)で約250キロカロリーなので、いかにメロンパンのカロリーが高いかが分かるでしょう。菓子パン1個じゃ足りないからと2個食べれば、ものによっては牛丼1杯食べるより多くのカロリーを摂取することになります。

 キャンディーやガム、甘い飲み物も、「知らず知らずのうちに取っている甘いもの」の代表格。野菜不足を解消しようと飲んでいる野菜ジュースは、食物繊維はほぼ取れません。むしろ糖質の取り過ぎになりかねない。飲みやすくするために果物を入れている野菜ジュースは、よりカロリーが高く、糖質が多くなります。

 甘いものは、スイーツだけにあらず。血糖コントロールが良い状態をずっと保っていたのに、急にコントロール不良になった患者さんに話をよく聞くと、「免疫力を上げるためにヨーグルトを食べるようにした」と言う。「ジャムをかけて食べていません?」とさらに聞くと、「酸っぱいので、ジャムをたっぷりかけています」「ジャムは使っていませんが、砂糖を入れて食べています」と答えた方もいました。

 無自覚に甘いものを取っていないか? 手っ取り早くチェックするなら、食べたもの飲んだものを毎日書き出し、見返す方法がお勧めです。まずは2週間「食日記」をつけてみてはいかがでしょうか? その際、コーヒーに入れた砂糖や眠気覚ましに取ったビターチョコなど、口に入れたものすべてを書き出すことがポイントです。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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