医者も知らない医学の新常識

多くの病気に関わる「肥満」のリスクは人種によって異なる

写真はイメージ

 肥満は糖尿病など多くの病気の危険性を高める世界的な大問題ですが、実はその基準値は国によっても違っています。

 肥満かどうかは、通常BMIという数値で判断しています。BMIとは体重(キログラム)を、身長(メートル)で2回割り算した数値ですが、日本ではこの数値が「25以上」を肥満としています。

 その一方で欧米の多くの国では、BMI30以上が肥満の基準です。身長が170センチの人で考えると、欧米では86・7キロ以上が肥満ですが、日本では73キロですでに肥満です。

 なぜ、こうした違いがあるのでしょうか? 実は人種によって、肥満の体への影響には差があるようなのです。

 今年のランセットという一流の医学誌に、人種差と糖尿病リスクについての研究結果が発表されています。イギリスで147万人という大規模な調査を行ったところ、白人でBMI30に当たる糖尿病のリスクは、中国人では26・9で同等と算出されたのです。つまり、白人よりアジア人では、同じBMIでも糖尿病になる危険性がより高いと考えられるのです。

 日本では欧米よりやせ形の糖尿病が多いことが知られていて、こうした点からも、肥満の基準は日本では厳しくする必要があるのです。

 BMIが健診で25を超えていたら、食事や運動に気をつけて生活習慣病の予防に力を入れる必要がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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