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新型コロナワクチンは1回の接種でも効果が期待できるのか

新型コロナワクチンの接種は2回必要
新型コロナワクチンの接種は2回必要(C)ロイター

 新型コロナウイルスワクチンは2回の接種が必要とされています。しかし、1回の接種でも感染予防効果が期待できるのであれば、より多くの人に速やかな初回接種を行うことで、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけることができるかもしれません。

 そんな中、新型コロナウイルスワクチンの初回接種と同ウイルス感染症による入院リスクの関連を検討した研究論文が、2021年5月1日付で世界的にも有名な医学誌「ランセット」に掲載されました。

 この研究では、スコットランド(英国)に在住している18歳以上の440万9588人が解析対象となりました。このうちワクチンの接種を受けていたのは約30%に当たる133万1993人(平均65・0歳)で、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンが71万1839人、アストラゼネカ社製ワクチンが62万154人でした。

 年齢や性別、社会経済的状況などの因子で統計的に補正を行って解析した結果、新型コロナウイルス感染症による入院のリスクは、ワクチンの接種後28~34日で89%、統計的にも有意に低下しました。ワクチン別の解析ではファイザー・ビオンテック社製ワクチンで91%、アストラゼネカ社製ワクチンで88%、入院リスクの低下が認められています。

 もちろん、初回ワクチン接種の長期的な感染予防効果については不明ですし、ワクチンを接種した人は接種しなかった人と比べて、健康状態が良好で感染に対する意識も高い人たちだったかもしれません。それゆえ、この研究で示された入院リスクの低下は、やや割り引いて考えた方がよいように思います。

 しかし、入院リスクが低下するということは、より多くの人に対するワクチンの初回接種が、医療の逼迫(ひっぱく)を防ぐことにつながる可能性を意味しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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