上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心房細動のほとんどは「左心房」が原因で発症する

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■異常な電気信号が発生

 心房細動のほとんどは、左心房につながる2本の肺静脈付近で発生する異常な電気信号によって起こります。心房が細かく不規則に収縮を繰り返して痙攣したような状態になり、動悸や息切れの症状が表れます。血流が悪くなるため血栓ができやすくなり、心原性脳梗塞や心不全につながって死を招くリスクがある不整脈です。加齢が大きなリスク要因で、高齢化が進んでいる日本では患者さんが増えています。

 拍動をつくっているという点から考えると右心房の方が重要ですが、心房細動の原因になる左心房にはより注意が必要といえます。

 心房細動の原因が左心房にあることは、以前からよく知られていました。全身から血液が流れ込む右心房に比べると、全身に血液を押し出す左心室に血液を送る左心房の方が大きな圧力がかかるため、トラブルが生じやすいのです。たとえば、年を重ねると左心房と左心室をつないでいる僧帽弁が傷みやすくなり、僧帽弁閉鎖不全症が起こります。僧帽弁がきちんと閉じないために血液が逆流すると、負荷がかかる左心房は徐々に拡大していきます。すると、左心房に異常な電気信号が発生して心房細動の発症につながるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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