独白 愉快な“病人”たち

前立腺がん克服した吉川精一さん「主治医の言葉に救われた」

吉川精一さん(本人提供)

 思い起こせば、現在の上皇陛下もかつて前立腺がんを治療されている。私も上皇陛下を見習って治療に専念しようと思いました。

 治療は放射線を選びました。手術が嫌だったことと、尊敬する棋士の故・米長邦雄元名人が晩年に前立腺がんを患い、放射線治療を選んだと知っていたからです。「私もそうしよう」と単純に思いました。

 放射線治療を始めるにあたり、半年間以上薬を飲んだり、注射をしたりしましたね。もちろん仕事もしていました。そして、あの東日本大震災から1年に当たる日に政府主催追悼式の司会を務め、その2~3日後から全37回の放射線治療に入りました。

 原則、月曜から金曜まで毎日がんセンターに通い、終わったのは初夏を迎えた頃でした。その後は半年に1回の検査が7~8年続き、今は年に1回血液検査をしてもらっています。先生は「もう通院しなくても大丈夫ですよ」って言うんですけど、「いや、もう一度だけ」と言いながら押しかけています(笑い)。せっかくのつながりがなくなるのは嫌じゃないですか。何かのときに心強いので、このご縁を失いたくないんですよね。

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