役に立つオモシロ医学論文

世界各国の死亡率に新型コロナウイルスが与えた影響は?

2020年の超過死亡の最多は米国で45万8000人
2020年の超過死亡の最多は米国で45万8000人(C)ゲッティ=共同

 ある集団において本来想定される死亡者数が、何らかの原因により超過した状態を「超過死亡」と呼びます。「死亡者数の想定外の上昇」と考えれば分かりやすいかもしれません。その要因として、「大規模災害」「戦争」「感染症の流行」などが挙げられます。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な流行)も、各国の死亡者数に大きな影響を与えたと推測できます。他方で感染対策の強化は、人々の健康に対する関心や配慮を高め、逆に死亡者数の低下につながる側面もあります。実際のところ、このパンデミックでどれほど超過死亡が発生したのでしょうか。

 新型コロナウイルス感染症による超過死亡を検討した研究論文が、英国医師会誌の電子版に2021年5月19日付で掲載されました。

 この研究では高所得国29カ国における2020年の死亡率データが解析対象となりました。その結果、ニュージーランド、ノルウェー、デンマークを除くすべての国で超過死亡が確認され、その数は約100万人と推定されています。国別の超過死亡は米国が最多で45万8000人、次いで英国8万5400人、イタリア8万9100人と続きます。他方で、ニュージーランドは2500人の減少でした。

 性別による解析では、多くの国で女性よりも男性で超過死亡率が高いという結果でした。また超過死亡は、世界各国で報告されている新型コロナウイルス感染症による死亡者数を上回っていました。つまり、感染症のパンデミックが与える死亡率への影響は、超過死亡で評価しなければ適切に把握できない可能性が示されているのです。

 この研究では日本のデータは解析されていませんでしたが、日本よりも感染対策が成功していたように見える韓国でも4000人の超過死亡が報告されています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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