男性不妊症のすべて

精子を作れるのか、作れないのか…それが問題だ

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男性不妊症の原因については多岐にわたることが知られています。平成26年度に全国39施設での男性不妊症患者7253名を対象に調査が行われました。その結果、男性不妊症の原因の1位は造精機能障害(82・4%)によるものでした。つまり、精子を作るのに障害があるケースです。

 2位は勃起障害や射精障害 などの性機能障害(13・5%)で、3位は精子が通る道が詰まっている精路通過障害(3・9%)でした。これは、精子は作れているのにうまく出ていけない状態にあるということです。

 第1位の造精機能障害ですが、その内訳は51%が原因不明で、次いで36・6%が精索静脈瘤でした。つまり、男性不妊症の多くは原因不明といえます。そのため、パートナーが検査をしたときに、同時に精液検査を行ない、たまたま精液所見が不良で見つかるケースが多いです。

■精子ができない原因の3割は「精索静脈瘤」

 ここで、造精機能障害が原因の不妊と造精機能障害以外の不妊とに分けて考えます。まずは、造精機能障害による不妊です。「精索静脈瘤」が約3割以上を占めます。左側に多く、静脈血が精巣につながっている精索静脈へ逆流して、蔓状静脈叢がうっ血をきたした状態を指します。

 典型例では、診察にて腹圧をかけたときに陰嚢の左側にブニョブニョとした静脈瘤を触診することができます。結果的に陰嚢内の温度が上昇し、造精機能障害を起こすと言われています。

 次に、染色体・遺伝子異常が引き起こす不妊です。「クラインフェルター症候群」と呼ばれる性染色体が1本多い「47,XXY」が最も多くみられます。また、Y染色体の精子形成に関与する「AZF(azoospermia factor)」の欠失によるものもあります。

 他には、薬剤性の不妊があります。抗がん剤やその他の薬剤により造精機能障害がみられます。最後に「停留精巣」と呼ばれる、本来は陰嚢内に位置している精巣が陰嚢以外に位置する病気です。精巣の発育が悪く、造精機能障害がみられます。

■女性の中で“いけない”膣内射精障害が増加中

 次に造精機能障害以外の不妊です。まずは、性機能障害によるものです。勃起障害と射精障害があります。射精障害では、自慰行為では勃起も射精も問題ないのに膣内で射精ができない状態を指す「膣内射精障害」によるものが最近多くみられます。

 次に、精路通過障害による不妊です。精子の通り道である精管が閉塞しており、射精した精液に精子が含まれていない状態を指します。原因不明な場合が多いです。また、一般的にパイプカットと呼ばれる精管結紮術後も外来ではよく見受けられます。

 男性不妊症の原因は多岐に渡るので、専門医による診察を受けることが望ましいと考えます。

小林秀行

小林秀行

1975年、東京都生まれ。2000年東邦大学医学部を卒業。卒後研修終了後に東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座免疫学分野に進学。医学博士を取得。ペンシルバニア大学獣医学部にてリサーチアソシエイト。その後、東邦大学医学部泌尿器科学講座に復帰。2014年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は男性不妊症。noteにてブログ「Blue-男性不妊症について」を配信中。

関連記事