セックスが痛い

性の健康は生きる健康。人生を存分に楽しめなくなることも

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 先日、noteで公開している自分の性交痛の体験記録を久しぶりに読み返してみました。

 若い頃の私は、「なりたい自分」になるために計画を立て、一つ一つ実行していく一方で、大きな壁となっていたのが性交時の痛みでした。産婦人科医の早乙女智子先生は「性の健康は『生きる健康』」とよく言いますが、まさにその通り。健康を害しているから、人生を計画通りに生きられないのです。

 20代は異性との出会いが多いですよね。でも、性交痛が壁になり、自分から離れていくこともありました。中には手を離さずにいてくれた人もいて、そのひとりと結婚したわけですが、次はどうやって妊娠するかが大きな課題でした。

 私の場合、性行為はなんとかできる。でも、その後に出産できるのか不安が押し寄せる。妊娠したくて頑張ったのに、妊娠したら出産の痛みに耐えられるだろうか。無痛分娩や帝王切開で乗り越えられるだろうか。結局、妊娠には至らなかったものの、不安な気持ちで何年も過ごしました。

 そして、いつの間にか心の健康まで害してしまい、でもそれをはっきりと自覚せず、暗いトンネルの中を這うように生きてきたような気がします。

 性交時の痛みは、特に経験のない人には軽視されがち。治療機関も非常に少ない。過去の私のように妊娠を望む人が適切な治療や心のケアを受けられず、SNS上でつらい心情を吐露しているのを見ると心が痛みます。

 不妊治療の保険適用が注目されていますが、切実に妊娠を望む人が健やかな性生活を送れるように、心のケアを含めた性機能不全の治療を、保険適用で行えるようになってほしいと思います。

 前述のように、性交時の痛みは健康問題。生殖問題にかかわらず、生きていく上で重い課題として患者さんの肩にのしかかってきます。特に妊娠を望む若年層の深刻な挿入困難は、積極的に治療できる環境を整えてサポートするべきだと思います。

小林ひろみ

小林ひろみ

メノポーズカウンセラー。NPO法人更年期と加齢のヘルスケア会員。潤滑ゼリーの輸入販売会社経営の傍ら、更年期に多い性交痛などの相談に乗る。

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