新たな薄毛治療 痛みなく頭皮の細胞を若返らせ髪の毛を生やす

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 近年、アンチエイジングの分野で注目を集めているのが幹細胞培養上清液だ。約1年半前からこれを用いて、薄毛対策をはじめとしたさまざまな治療を行う「麹町皮ふ科・形成外科クリニック」の苅部淳院長に話を聞いた。

 幹細胞は、体をつくるどの細胞にも変化できる「分化能」と、同じ能力を持った細胞に分裂できる「自己複製能」を持った細胞で、再生医療に用いられている。京都大学・山中伸弥教授が開発したiPS細胞も、幹細胞のひとつだ。

「幹細胞は、特殊な培養液を用いて増やしていきます。その培養液から幹細胞を取り除いた液体が、幹細胞培養上清液になります」

 幹細胞培養上清液には、幹細胞から分泌された成長因子や免疫調整因子、抗炎症性因子、神経再生因子などの300種類を超える成分が含まれている。この液体を投与することで、老化した部位の修復、毛細血管や血管壁の修復が促される。

「薄毛治療の場合、100人以上の方に治療を行っていますが、『生えなかった』と話す患者さんは今のところいません。治療ではあらゆる角度から患者さんの頭皮の状態を撮影し、経過を追っていきます。その写真を見ても改善されているのは明らかです」

特殊な医療機器を用いて注入
特殊な医療機器を用いて注入(提供写真)
炭酸ガスの圧力で頭皮に直接注入

 薄毛治療は特殊な医療機器(写真)による炭酸ガスの圧力を利用して、幹細胞培養上清液を頭皮に直接注入する。頭皮に均等に注入でき、痛みはなく、患者は「強い力で押されているな」という振動を感じる程度だ。

 幹細胞の薄毛治療では自分の脂肪から培養した幹細胞そのものを頭皮に注入する方法もあるが、台湾の幹細胞培養加工施設で行われた比較試験では、幹細胞培養上清液の方が、より発毛・育毛改善効果が認められた。

「幹細胞の培養には数カ月間かかり、最低でも100万円以上かかります。幹細胞培養上清液は単回なら当院では1回11万円、発毛周期に合わせて計5回推奨で、決して安いとは言えませんが、幹細胞の治療よりは費用を抑えられます」

 ただし、幹細胞培養上清液は、ものによって成長因子やサイトカインなどの量が異なる。分析内容や安全性を確認し、高品質な幹細胞培養上清液を選ぶ必要がある。

 また、幹細胞培養上清液に含まれる成長因子はタンパク質のため新鮮な状態で使用することが大前提。苅部院長は専用の特殊な冷凍庫を用いて冷凍し、治療のたびに解凍しているそうだが、取り扱いについても、可能であればチェックした方が安心だ。

 効果の持続期間は?

「治療後、長く経過した患者さんがまだいないため、どれくらい効果が持続するのかは未知数です。ただ、頭皮の細胞が若返り、発毛周期が安定すると、髪の毛は5~6年伸び続ける。治療後5~6年はいい状態をキープできるのではないかと考えています」

 薄毛治療は、ミノキシジルやフィナステリドといった薬の内服治療や、塗り薬を使う方法がよく知られている。

「発毛率については、まったく同じ人でテストしているわけではないので医学的な見地ではお答えはできません。しかし私の実感としては、幹細胞培養上清液での治療は、ほかの薄毛治療と比べてかなり優位にあると思います。たとえば、内服薬治療では内臓に負担がかかる可能性がありますが、注入の場合、それがありません」

 とはいえ、内服治療では数千円から受けられるところも……。いずれにしろ、髪の毛が気になる人にとっては選択肢が増えるのはいいことだ。長年の悩みと手を切れるかもしれない。

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