医者も知らない医学の新常識

太極拳がメタボに有効って本当なのか?米医学専門誌で報告

写真はイメージ

 健康診断でお腹回り(腹囲)を測定するのは、それが内臓脂肪の量と関係があるからです。内臓脂肪が増えると、膨れた脂肪細胞からホルモンのような物質が産生され、それが血糖値を上昇させたり、動脈硬化を進行させたりする原因となることが分かっています。内臓脂肪が多いメタボの状態は、多くの生活習慣病の予備群と言っていいのです。

 内臓脂肪を減らすためには運動が大切といわれます。それでは、どのような運動が良いのでしょうか? 今年の米国内科学会が発行する医学専門誌に、「太極拳のメタボ改善効果」を検証したユニークな論文が掲載されました。香港で50歳以上のメタボの人に、有酸素運動と筋トレを組み合わせた通常の運動を指導した場合と、太極拳を指導した場合を、何もしない場合と比較して、3カ月の経過観察を行ったのです。

 その結果、何もしない場合と比較して、腹囲は通常の運動で1・3センチ、太極拳では1・8センチ減少していて、体重も減少傾向が認められました。また、血液では善玉コレステロールの改善が、太極拳群でのみ認められたのです。これは中国での研究ですから、太極拳が文化として根付いている点も大きいと思いますが、それを差し引いても注目の結果です。健康のために良い運動は何か、という点については、いろいろな意見がありますが、むしろ「体を動かそう」という気持ちそれ自体が、健康の秘訣であるのかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

関連記事