コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

線虫がん検査<下>見分けられる感度は85%以上 自宅で完結

(HIROTSUバイオサイエンス提供)
(HIROTSUバイオサイエンス提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、昨年がん検診を受けた人が前年に比べて約3割減少したことが「日本対がん協会」の調査で分かっている。感染を心配した「受診控え」が減少の要因で、本来であれば発見されるべきがんが見過ごされ、今後進行がんとなって見つかる割合が増加することが懸念されている。

 そんな状況において、医療機関に行かなくても自宅で簡単にがんリスクが調べられる新しい検査が登場している。「線虫がん検査(N―NOSE・アット・ホーム)」と呼ばれるがんの1次スクリーニング検査で、今年2月から東京都と福岡県で先行開始され、5月からは対象エリアを全国に拡大、7月には全47都道府県で受けられる予定という。

 線虫がん検査とはどんな検査なのか。サービスを提供するバイオベンチャー「HIROTSUバイオサイエンス」(東京都千代田区)事業本部長の久保田陽一取締役が言う。

「検査では、体長約1ミリの『シー・エレガンス』という種類の線虫(糸状の細い生物)を用います。線虫は機械では検知できない微量なにおい物質を嗅ぎ分けることができ、がん患者の尿に含まれるがん特有のにおいを検知します。ですから尿を検体として提出してもらい、がんのリスクを調べる『生物診断』という検査法になります」

 検査の手順はこうだ。専用Webサイトで検査を申し込むと、1週間程度で指定の住所に検査キットが届く。専用の容器に尿を採取したら、同梱されているIDとパスワードをWebサイトに入力し、検体(尿)の提出日を予約する。すると、その日程に合わせて専用スタッフが集荷に来るので、それまで検体は冷凍庫に保管しておく。検体の集荷から約6週間後に、検査結果が郵送で届くという流れだ。

「検査は、シャーレ(容器)に50~100匹の線虫と尿を配置し、30分ほど置いてから線虫の分布を解析します。精度を高めるため、1検体につき二十数回の解析を経て最終的な総合評価とリスクの度合いを導き出しています。線虫ががんを見分ける感度は85%以上であることが、臨床試験で確認されています」

 在宅で完結できる「N―NOSE・アット・ホーム」の費用は、検査料、キット代、集荷料を含め税込みで1万3750円(北海道と沖縄は1万4300円)。一部の都市部では、検体を指定場所に提出できる「N―NOSEステーション(またはサテライト)」があり、そこに提出した場合は、集荷料2200円分がかからないという。

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