病気を近づけない体のメンテナンス

膝<上>変形性膝関節症を軽減する歩き方と姿勢 専門医が伝授

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 階段を下りる時や急に立ち上がった時など、体重が膝にかかった時に痛む「変形性膝関節症」。

 加齢とともに膝関節でクッションの役割をしている軟骨がすり減って変形してきてしまう病気だ。50歳以上だと、男性の10人に1人、女性の4人に1人が罹っているとされる。

 初期の膝痛はずっと痛みが持続するケースは少なく、たまに「痛む時期」があるけど、その後「痛まない時期」が長く続いたりする。そのため「いまは痛くないから大丈夫」と放置してしまい、そのうちまた痛みが出る。このパターンを何度も繰り返している人が多い。

変形性ひざ関節症 今度こそ治す方法を教えてください!」(永岡書店)の著者で、「リソークリニック」(東京都世田谷区)の磐田振一郎院長(整形外科専門医)が言う。

「膝痛に気づいたら、きちんと整形外科を受診してシロクロはっきりさせるべきです。早めに診断をつけて、『自分は変形性膝関節症という病気を抱えている』という自覚ができると、膝を大切に扱うようになるし、早めに予防対策を行うようにもなります。そういう意識を持っているかどうかで、膝の状態の進行や悪化を抑えられることも少なくないのです」

 ただし、受診して変形性膝関節症の診断がついても、整形外科でできる治療はあまりない。軽症や中等症の段階でできることは、せいぜいヒアルロン酸を注入したり、炎症で水がたまった時に水を抜いたりするくらい。

 それも必要なければ「しばらく様子を見ましょうか」となる。基本的に、膝痛で整形外科ができることは「保存療法で様子を見る」と「手術をする」の2つしかないという。

 では、軽症や中等症なら保存療法(外来処置)だけでいいのかといえば、そうではない。膝痛をこれ以上進行させないために、行うといいケアや予防の対策法はいろいろある。しかも、軽症であればあるほど使える策は多いし、その策が効果を発揮しやすくなるのだ。

「軟骨が大してすり減っていない軽症のうちに取り組んでほしいのは、『姿勢』や『歩き方』の改善です。膝関節にかかる体の重みの荷重は、どんな姿勢や歩き方をしているかで大きく変わってきます。この先、さらに膝の軟骨をすり減らしたり、膝関節のすき間を狭くしたりするのを防ぐには、いまのうちに姿勢や歩き方を見直して、膝にかかる負担を減らしておくのがいいのです」

「姿勢」のチェックの仕方は、壁に背中を着けて真っすぐ立ってみる。正しい姿勢が取れていると、後頭部、肩甲骨、お尻、かかとの4点が壁に着く。また腰には手のひら1枚分のすき間ができる。そして、この状態のまま片足の膝を曲げてゆっくり上げてみる。体がグラついて足をスッと上げられなければ、姿勢のバランスが崩れている証拠だ。

 次は「歩き方」のチェック。普通に廊下を歩いてみる。上から見た時に左右の足のつま先を外側に開きながら進む歩き方や、モデルのように1本の線の上を歩くような歩き方は、膝の一部に負担がかかり膝を痛めやすい。膝に負担をかけないためには、つま先を前に向け、肩幅より少し狭く、2本の線の上を歩くような足の運び方がいいという。

「姿勢や歩き方の矯正におすすめするのは、頭の上に本をのせて歩くトレーニングです。頭の上に小ぶりの辞書などをのせて、落とさないように注意しながら真っすぐ歩きます。これを行うと、自然に顎を引いて、背中を真っすぐ伸ばし、お腹に力を込め、膝を伸ばしながら歩くようになります。体の荷重バランスが整って、膝への負担を少なくできます。1日30秒でいいので習慣にするといいでしょう」

■スクワットも効果あり

 膝痛が軽症段階のうちに鍛えておくといい筋肉もある。背骨(上半身)と大腿骨(下半身)をつないでいる「大腰筋」だ。膝が痛くない時に行うといい。筋トレの基本はスクワットになる。

 おすすめのスクワットは2つ。「つかまりスクワット」は、椅子の後ろに立ち、椅子の背をつかんで膝の高さくらいまで腰を沈ませてから元の姿勢に戻る。「壁スクワット」は、表面がツルツルした壁に背中を着けて両足を前に出す。そして壁に体重を傾け、ゆっくり腰を膝の高さまで沈ませてから元の姿勢に戻る。

 膝を痛めないために心がけるポイントは、①膝をつま先よりも前に出さない②両膝・両つま先を正面に向ける③深く屈伸しすぎないことだ。スクワットは1日の目安として10回×3セット行うといいという。

 次回は、膝の痛みが中等症の場合のケア法を紹介してもらう。

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