科学が証明!ストレス解消法

「悪いニュース」は血液量や脈拍数に影響 うつ傾向も強める

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 テレビのニュースやワイドショーを見ていると、コロナをはじめとした暗い話題ばかりが目につきます。明るい話題といえば、大リーグを席巻する大谷翔平選手の活躍や、星野源さんと新垣結衣さんの結婚(人によってはショックな話題かもしれませんが)、あとはなかなか思い出せない……という人も少なくないかもしれません。

 人は基本的にネガティブな情報に目が行ってしまう傾向があります。これを「ネガティビティー・バイアス」と呼びます。否定的な情報に目を向けて、それに対処する方法を準備しておく方が生存競争の上では有利ですから、どうしてもネガティブなものに目を向けがちになってしまうんですね。本当は明るいニュースもあるはずなのに、陰鬱な話題ばかりを想起してしまうのは、人間である以上仕方のないことでもあるのです。

 ただし、心に負荷をかけるような悪いニュースを見続けるのは控えた方がいいという研究があります。ミシガン大学アナーバー校のソロカらが17カ国にまたがる1156人を対象に行った研究(2019年)で、「平均的な人間はポジティブなニュースよりもネガティブなニュースによって、皮膚の電気反応や血液量、脈拍数に大きな影響を受ける」という結果が示されました。

 また、1997年にサセックス大学のジョンストンとグラハムは、30人の被験者たちを次の3つのグループに分け、以下のような実験を行っています。【グループ1】ポジティブな内容のニュース速報が14分間集められたビデオを見る【グループ2】中立的な内容のニュース速報が14分間集められたビデオを見る【グループ3】ネガティブな内容のニュース速報が14分間集められたビデオを見る。

 実験の結果、【グループ3】の被験者たちは、不安や悲しい気分が増幅され、ニュースに関係ない個人的な心配事まで大げさに捉えるようになったり、抑うつ症状や悲観的思考に陥りがちになることが分かりました。

 メディアから流れる暴力的なニュースやネガティブな報道は、長期的に心理的悪影響をもたらす――とは、イギリス人の心理学者・デイビー博士の言葉です。彼は、こういった報道はストレスや不安、抑うつ症状を増大させ、場合によっては、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす要因になるとも指摘しています。

 しかも、「被害を強調して放送したり、感情的な側面を多分に押し出したりすると、その影響は顕著である」とも述べています。何げなくつけているテレビから流れてくるネガティブなニュース。そして、論理的に物事を分析する以上に、感情的なコメントを発する出演者たち……そういう番組ばかり目にしていると、知らないうちに気分が落ち込んでしまうのです。

「こんな悲惨な事実がある」と知ることは大事です。しかし、「こんなに頑張っている人たちがいる」といった、気持ちが明るくなるニュースを知ることもとても大事です。悪いニュースばかりを見ずに、意識的に自分から良いニュースをキャッチするクセをつけるようにしてください。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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