Dr.中川 がんサバイバーの知恵

小倉智昭は勃起しないが…男性機能はがん治療でこう変わる

小倉智昭さん(C)日刊ゲンダイ

 小倉さんが触れた射精は、前立腺の全摘手術でも問題です。前立腺と一緒に精嚢を切除すると、射精に必要な精嚢の収縮が起こらず、射精しなくなるのです。オーガズムは残る人と残らない人がいて、手術前に予測するのは難しい。

 米医学誌に掲載された研究では限局性前立腺がんの2005人を対象に、各治療から5年間の排尿、排便、性機能、ホルモンの4機能を検証。各治療は、経過観察のみの監視療法、神経温存前立腺全摘術、放射線の対外照射、体内に放射線を埋める小線源治療です。

 その結果、全摘術は監視療法と比べて、5年時の尿失禁、3年時の性機能で悪化。小線源治療は、同じく1年時の排尿刺激症状、性機能、排便機能で悪化しました。

 機能維持で優れているのが、体外照射です。5年間のどのタイミングでも排尿、性、排便で監視療法との差が認められませんでした。高リスク患者には、ホルモン治療を併用する外照射を行いますが、これも良好。全摘と比べて、6カ月時点のホルモン機能と1年時の排便機能は悪化しましたが、5年時の性機能、5年間の尿失禁は良好でした。

 泌尿器科系のがんを治療するなら、内視鏡か放射線が機能維持に最適。大腸がんは放射線を行えないので、内視鏡がベター。そのためには早期発見が大切で、がん検診の受診が重要です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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