あなたを狙う「有毒」動物

マダニとツツガムシが媒介する6種類の感染症 死亡例も

「野兎病」は野ウサギが減り幻の病気に

 「日本紅斑熱」と「ツツガムシ病」は、リケッチアと呼ばれる細菌よりは小さくウイルスよりも大きい病原体が引き起こす病気です。リケッチアの種類は違うのですが、症状はほとんど一緒で、発熱、発疹、倦怠感、頭痛などが主な症状です。テトラサイクリン系の抗生物質がよく効くため、早めに治療すれば、さほど怖い病気ではありません。ただし治療が遅れると死亡することもあります。

 「日本紅斑熱」については、2007~2019年の13年間で2726例(平均約210人/年)、死亡は44例(3・4人/年)が報告されています。ツツガムシ病は毎年400人前後発生しています。死亡数は日本紅斑熱よりも少なく、平均すると毎年2人前後です。

 「重症熱性血小板症候群」(通称SFTS)は新興の感染症で、2006年に中国で初めて確認されました。発熱と嘔吐や下痢を伴い、白血球と血小板が減り、重症例では神経障害を起こし、血液凝固異常(DIC)から多臓器不全に陥って、死に至ることがあります。中国での致死率は8~16%とされています。2009年にはアメリカで同様の症状の患者が2人見つかり(2人とも回復)、中国のSFTSウイルスに近いウイルスが同定されています。インド、アフリカ、ヨーロッパでも類似した患者とウイルスが見つかっています。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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