進化する糖尿病治療法

医師の「とりあえず様子を見ましょう」に納得してはいけない

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 数値はできればノートに記録しておき、基準値(家庭での血圧の基準値は135/85㎜Hg未満)を超えたり、基準値は超えていないけれど数値が上昇傾向にあるようなら、内科で相談することを勧めます。その際、医師から「とりあえず様子を見ましょう」「この次も数値が高かったら何か考えましょう」といった言葉が出たら、少し注意が必要です。

 最近、よくいわれているのが「clinical inertia」という言葉です。前出の2019年の高血圧治療ガイドラインでは、日本高血圧学会が「臨床イナーシャ」という言葉を当てています。

 高血圧や糖尿病の診察では、治療目標に達成していなかったり、数値が多少高かったりしても、治療内容を見直さず「とりあえず様子を見ましょう」「とりあえず今日は同じ薬を出しておきましょう」となりがち。しかしこれでは、適切な治療になりませんし、治療開始の遅れ、将来的には合併症の発症のリスク増大につながりかねません。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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