がんと向き合い生きていく

妻が胃がんに 心まで病気にならないよう気分を変えたいが…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「イライラなさると血圧にも悪いですよ。奥さまががんのことばかりではなく、心まで病気にならないように、旦那さんが気遣ってあげてください。気分を変えるのに、なにか趣味はありますか? リラックスできること、体がゆっくり気持ちがいい状態をつくること。心が病気にならない秘訣です」

 それなら、温泉だ。露天風呂がいい。すぐ頭に浮かびましたが、今は電車に乗るのが怖いから温泉にも行けません。私も妻も美術館や仏像巡りが一番の趣味でしたが、それもすべて閉館で行けないのです。

 看護師さんが「気持ちがいい状態をつくることが心が病気にならない秘訣」と、それこそ親切にアドバイスしてくれたのはありがたいのですが、これはどうしようもありません。どう考えても、やっぱりまず手術予定日が決まることが先決でしょう。

 家に帰って、仕方なしに図書館から借りてきた「心身養生のコツ」(精神科医・神田橋條治著)という本をパラパラめくっていたら、こんなことが書いてありました。心が病気にならないためには、ヨガの死体のポーズで「ちょっと死んでみる」というのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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