最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

患者の旅立ち後、残された家族にとってもペットが心の支えに

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ある日、聴覚の衰えを訴えられたので、試しに補聴器の貸し出しをしました。すると、大きかった地声が小さくなり、TVの音量が下がっていきました。そして今まで意識していなかった猫の爪研ぎの音や、かすかな鳴き声が聞こえるようになったと、患者さんが大変喜ばれたことが、今でも思い出されます。

 また82歳の女性の患者さんは、小型犬をペットとして飼っていました。歩行器を使いながら散歩に犬を連れていっていたのですが、時に駆け回る犬を捕まえようとして、ゼーゼーハーハーと息が上がることも。そんな犬との日常を送る患者さんが笑いながら話していたことが印象に残っています。

「もう寿命なのかなって思っているけど、ルイ(ペットの犬)がいるから頑張らないとって」

 55歳のアルコール性肝硬変の男性の患者さんもいました。看護師だった奥さまとお子さん、要介護2の患者さんのお母さまといった3世代と大型犬1匹のお宅でした。患者さんを中心にした仲の良いご家族でしたが、ご本人は病気であるにもかかわらず、お酒を飲み、たばこも吸うといった生活を送っていました。奥さまはそんなご主人を見かねて入院させるものの、ご本人が「病院は嫌だ」と言って強引に退院。これまで何度か入退院を繰り返してきたということでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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