頸腺毒の存在は以前から知られていましたが、それだけで毒ヘビと呼ぶわけにはいきません。ちなみに毒の成分はブフォトキシンというステロイド系の物質です。もともとエサとなるヒキガエルが持っている毒で、そのまま再利用しているのです。そのためヒキガエルがいない地域のヤマカガシの頸腺分泌物には毒が入っておらず、危険はありません。
もうひとつは「デュベルノイ腺」と呼ばれる上顎の器官から分泌される毒液です。なかなか強力な毒で、その作用が分かってきたため毒ヘビと認定されるに至ったのです。ただしヤマカガシには、毒を効率よく相手に注入するための毒牙がありません。その点が他の毒ヘビとの大きな違いです。
毒ヘビは一般に「毒腺」(毒を作り出す)、「導管」(毒を牙に運ぶ)、「毒牙」の3つを備えており、とりわけ毒牙は毒液を獲物に効率よく注入するための構造をしています。たとえばマムシの牙は管牙といって、牙の中が管状になっており、注射器のように毒液を打ち込むことができます。またコブラなどは溝牙といい、牙に溝があって、そこを毒液が流れて相手に届くようになっています。毒の一部は外にこぼれてしまうため管牙よりも効率は悪いですが、毒量で補っています。
あなたを狙う「有毒」動物