あなたを狙う「有毒」動物

ヤマカガシには毒を注入する「毒牙」がなく毒の被害は珍しい

(C)leszekglasner/iStock

 頸腺毒の存在は以前から知られていましたが、それだけで毒ヘビと呼ぶわけにはいきません。ちなみに毒の成分はブフォトキシンというステロイド系の物質です。もともとエサとなるヒキガエルが持っている毒で、そのまま再利用しているのです。そのためヒキガエルがいない地域のヤマカガシの頸腺分泌物には毒が入っておらず、危険はありません。

 もうひとつは「デュベルノイ腺」と呼ばれる上顎の器官から分泌される毒液です。なかなか強力な毒で、その作用が分かってきたため毒ヘビと認定されるに至ったのです。ただしヤマカガシには、毒を効率よく相手に注入するための毒牙がありません。その点が他の毒ヘビとの大きな違いです。

 毒ヘビは一般に「毒腺」(毒を作り出す)、「導管」(毒を牙に運ぶ)、「毒牙」の3つを備えており、とりわけ毒牙は毒液を獲物に効率よく注入するための構造をしています。たとえばマムシの牙は管牙といって、牙の中が管状になっており、注射器のように毒液を打ち込むことができます。またコブラなどは溝牙といい、牙に溝があって、そこを毒液が流れて相手に届くようになっています。毒の一部は外にこぼれてしまうため管牙よりも効率は悪いですが、毒量で補っています。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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