■咬まれても必ずしも毒に当たらない理由
ところが、ヤマカガシにはそうした牙がありません。その代わり上顎の奥歯が鋭い剃刀状(長さ2~3ミリ)になっており、これで相手の皮膚に切り傷を付けることができます。また奥歯の前に導管の開口部があって、そこから毒液が滴り落ちるようになっています。運が良ければ(咬まれた側にとっては運が悪ければ)、毒液が傷口から相手の体内に浸み込むという仕掛けです。しかし、咬まれても大抵は前歯だけにとどまるので、ヤマカガシの有毒咬傷が成立するのは、かなり珍しいことなのです。
毒の主な作用は血液凝固機能の破壊です。われわれ哺乳類の血液には、ケガなどの出血を止めるために2つの凝固システムが備わっています。ひとつは血小板で、血管が損傷を受けるとそこに集まって塊を作り、止血します。もうひとつは繊維素と呼ばれる仕組みで、血液中のフィブリンというタンパク質が繊維状に固まって、赤血球などを巻き込みながら血栓を形成して傷口を塞ぎます。マムシ毒は血小板を減少させる作用がありますが、ヤマカガシ毒はフィブリンを減らすことでより出血しやすくします。
あなたを狙う「有毒」動物