時間栄養学と旬の食材

アユは「天然」と「養殖」で含まれる栄養成分が大きく違う

丸ごと食べられる
丸ごと食べられる

 アユは、淡水にすむ魚で旬は6月から9月。寄生虫の影響から生食はおすすめできませんが、塩焼きなどで焼いて食べるのは絶品ですよね。旅先で販売されている天然物のアユは実はとても貴重で、市場に出回るものはほとんど養殖物ともいわれています。

 そんなアユですが、天然物と養殖物で栄養成分が異なります。丸ごと食べることができる魚なので、当然骨に含まれるカルシウムはたくさん取れますが、アユの内臓にはウナギに匹敵するビタミンA(レチノール)が含まれ、目の健康を助けたり、感染症を予防する効果があります。

 そして、血中のLDLコレステロールの酸化を抑制したり、老化防止にも効果があるとされるビタミンEも内臓に多く含まれていて、含有量は魚介類の中で一番! 特に養殖アユにたくさん含まれているので驚きです。

 反対に天然アユの内臓には大量のビタミンB12と鉄が含まれます。ビタミンB12は、悪性貧血や動脈硬化を予防してくれるビタミンで、光への感受性も高めてくれるため安眠効果も期待できます。ビタミンB12を吸収しやすいのは午後の早い時間帯なので、昼食にアユの塩焼きを食べるのもいいでしょう。ちなみにビタミンAは養殖物の方が4倍多く、ビタミンB12は天然アユの方が6倍多く含まれています。

 また、養殖アユは脂の乗りが良く天然アユと比べてエネルギーは高めになります。焼いた場合で比較すると、100グラム当たり天然177キロカロリー、養殖241キロカロリー。内臓だけで比べると100グラム当たり天然194キロカロリー、養殖558キロカロリーとなっています。

 養殖アユの内臓のエネルギーが高いのは脂肪酸の量の違いが原因です。天然アユの内臓焼き(100グラム中3.26ミリグラム)に対して、養殖アユの内臓焼きは、100グラム中16.39ミリグラムで、養殖アユの方が5倍も多く含まれているからなのです。

 でも、脂肪酸が多いのは悪いことだけではありません。血液をサラサラにしてくれたり、血中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす働きがあるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が豊富に含まれているので、目的に応じて食べ比べるのもおすすめですよ!

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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