あなたを狙う「有毒」動物

セアカゴケグモ 原産地の豪州でも1950年代以降死者はゼロ

足が咬まれると…

「死ぬ」というのも大袈裟すぎます。発見から四半世紀以上が経過し、その間に数十人が咬まれて治療を受けましたが、死者はいまだにゼロです。本家のオーストラリアはどうかというと、1940年代までは、主に乳幼児や子供が何人か犠牲になっていたようです。しかし1950年代中頃に抗血清が実用化されて以来、1人も死んでいないといいます。また、王立メルボルン子供病院が公開している治療ガイドラインによれば、「セアカゴケグモの毒で命を脅かされる可能性はほとんどない」そうです。

■心筋梗塞と間違えられるほどの激痛

 死ぬ心配はなさそうですが、死ぬほど痛い目に合う危険があります。セアカゴケグモ咬傷の主症状は、耐えがたいほどの激痛です。咬まれた直後はほとんど痛みはありません。10分~1時間ほど後から痛み始め、時間とともに増していきます。それに伴って咬まれた周辺が赤く腫れ、さらにリンパ節まで痛み始めます。重症例では、別の場所も痛むことがあります。手指を咬まれると胸に激痛が生じたり(急性心筋梗塞と間違えられることがある)、足が咬まれると腹痛や背中の痛み(内臓系の病気が疑われることがある)に襲われるのです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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