あなたを狙う「有毒」動物

セアカゴケグモ 原産地の豪州でも1950年代以降死者はゼロ

足が咬まれると…

 さらに咬まれた場所の周辺で異常な発汗があったり、頭痛、倦怠感、吐気などの全身症状が出ることもあります。オーストラリアの文献には「持続勃起症が起こることがある」とも書かれています。勃起が数時間も続くと、ペニスが壊死してしまいます。怖いですね。

 とはいえ咬まれても、必ず症状が出るとは限りません。クモは相手に注入する毒液の量を調節することができます。クモにとって、人を咬んだところで腹の足しにもならないので、毒を使わないことが多いのです。オーストラリアの文献によれば、有毒咬傷は全体の1~2割しかないようですし、毒量が少ない場合も多く、大抵は1~2日で症状が緩和していきます。

 重症化するのは、その中のさらに数%に限られます。耐えがたいほどの痛みが数日も続く患者には、馬から作った抗血清が使われることがあります。馬にセアカゴケグモの毒を注射して抗体を作らせ、それを精製して患者に打つのです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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