「マスク熱中症」を防ぐ正しい使い方 気温上昇でトラブル増加

夏、マスクの内側は40度を超えることも
夏、マスクの内側は40度を超えることも(C)日刊ゲンダイ

 今年もコロナ禍が終わらないまま夏を迎えることになりそうだ。ワクチン接種は徐々に進んでいるが、打てば安心というわけではなく、感染予防のためにもまだまだマスクは手放せない。あらためて、夏のマスクの着け方を確認しておきたい。

 外出時にはマスクを装着するのが日常となり、マスクによる健康トラブルが増える一方。中でも、頭痛を訴える人がたくさんいて、頭痛外来を訪れる患者が急増しているという。

 マスク頭痛が起こる原因はいくつか指摘されていて、「自分が吐いた息をたくさん吸うことで脳が二酸化炭素過多の状態になり、脳の血管が拡張されて頭痛を招く」「マスク装着時にゴムを耳にかけることで、首の筋肉に大きな負荷がかかり、強い首凝りが起こって頭痛を引き起こす」といわれている。中でも、これからの季節は「マスク熱中症」による頭痛に注意が必要だ。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏は言う。

「ずっとマスクを着けていると、マスクの内側の温度は40度を超すこともあります。新鮮な空気を吸い込む際も、温かくなっているマスクを通過するため空気は暖まってしまう。さらに吐く息がマスクを温めるので次に吸い込む空気にも熱が加わって温度が上昇します。われわれは主に鼻呼吸で脳を冷やしています。鼻腔の奥には脳とつながっている毛細血管がたくさん通っていて、鼻呼吸によって冷たい空気を通過させることで効率良く脳を冷却しているのです。それがマスク着用で冷えた空気を吸い込めない状態になると、脳の温度が上昇して自律神経中枢がうまく働かなくなり、体温がコントロールできなくなって熱中症を招いてしまう危険があります」

 体に熱がたまって起こる熱中症は、目まい、吐き気、頭痛、けいれん、意識障害などさまざまな症状が表れる。重症度はⅠ度~Ⅲ度に分類され、Ⅱ度=中等度以上になると頭痛が起こる。

「脳が温まった状態が続くと、脳の細胞が熱で傷害されて炎症が起こります。すると、損傷を受けた細胞からプロスタグランジンという痛みを引き起こす生理活性物質が生成され、頭痛が表れるのです。頭痛はいわば脳の防御アラームですから、早急に脳を冷やす必要があります。放置していると重度の熱中症につながってしまいます」(梶本修身氏)

■通気性を考慮して2タイプ併用も

 脳を冷やすためには、やはり定期的に鼻から冷えた空気を取り込むことが大切になる。どこに行くにもマスクを着けっ放しにしていると、冷えた空気を吸い込めない。熱中症を防ぐためには臨機応変にマスクを使い分けるのも一案だ。

 今はほとんどの人が不織布マスクを装着している。ただ、不織布マスクはウイルス感染を防ぐ一定の効果が認められている分、通気性が良いとはいえない。その点、ウレタンマスクは比較的通気性がいい。ウイルス防御効果はないといわれているが、大きな飛沫をまき散らさない効果は期待できる。

「湿度が高く暖かい空気を吸い込み続けることを避けるのが一番重要です。通気性が良くない不織布マスクは、通勤電車内や職場など人と接する場面で装着し、一人で屋外を移動する時は、通気性が高いウレタンマスクに替えるだけでも違ってきます。交換する際にマスクの表面を触らないようにして、一時的に外したマスクはケースに入れておくなど注意が必要ですが、マスク熱中症を防ぐために試してみるのもいいでしょう」(梶本修身氏)

 コロナ感染を予防できても、熱中症になってしまったら元も子もない。気温がどんどん高くなるこれからの季節、通気性も考慮してマスクを併用したい。

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