Dr.中川 がんサバイバーの知恵

立川談笑は全摘も…超低&低リスク甲状腺がんは手術しない

立川談笑さん(C)共同通信社

 早期発見で「超低リスク」「低リスク」と診断されると、ガイドラインでは全摘を「しない」ことが推奨されています。この2つは進行が比較的緩やかで、全摘をせずとも、2つを合わせた10年生存率は97%。全摘は過剰診療になる恐れがあるのです。全摘をすると、ホルモンが分泌されず、一生ホルモン剤が手放せませんから。

 それでも、「3%は亡くなっている」と心配する人もいるでしょう。そのリスクをつぶすために経過観察を続けます。経過観察を続けながら寿命をまっとうされる方は珍しくありません。元気なときに腫瘍が増大してきたら、そのタイミングで適切な手術を検討するといいでしょう。

 談笑さんは「検診を受けてください」と語っていましたが、この甲状腺乳頭がんについては早期発見の場合、手術は過剰診療になるので、このことは頭に入れておくことをお勧めします。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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