みんなの眼科教室 教えて清澤先生

視界の中に砂嵐のようなちらつきがあって集中できない…

子供の時から症状がある人はおそよ4割
子供の時から症状がある人はおそよ4割

【Q】20歳の男子学生です。小学生のころから、いつも視界の中に砂嵐のような“ちらつき”があって勉強に集中できません。最近、「ビジュアルスノウ症候群」とか「視界砂嵐症候群」と呼ばれる病気を知りました。診断方法や治療法を教えてください。

【A】同様の訴えで来院される患者さんがおられます。「ビジュアルスノウ症候群」とは、患者さんが見ている風景が、調整が不十分な昔のアナログテレビの画面と同じ「雪景色」のように見えることから付けられた名称です。約1000人を対象とした英国でのアンケート調査では、その頻度は2~4%と稀なものではありませんでした。

 この疾患は従来、片頭痛に合併することが多いとされていましたが、1995年以降、本格的に研究されてその概念が確立されつつある中で、必ずしも片頭痛が伴うわけではないことがわかってきました。しかも、ほとんどの患者は眼科的欠陥を伴いません。ただし、その症状は継続的であり、何年にもわたって持続する可能性があります。普通はあまり進行しませんが、子供の時から症状があったという人が患者の40%もいます。残念ながら新しい疾患であり、まだ診断法や治療法は確立していません。

 ビジュアルスノウに関する報告では、雪のような景色に加えて、光視症、内視現象(視野内で点が動き回るような視覚的現象)、動く像に残る残像の延長、夜盲症(暗い場所での視力低下)がよく見られるとされていて、雪景色のような視界の他に上記の症状のうち少なくとも2つを併せ持つものをビジュアルスノウと診断するという案も提唱されています。

 現在、この病気を解明するために、患者の脳機能の変化を調べる研究が進んでいます。私も参加している東京医科歯科大学の神経眼科研究グループと東京都健康長寿医療センターPET研究室は、ビジュアルスノウ症候群患者の脳糖代謝変化を調査しました。この結果、患者は、白と黒の縞模様を判別するコントラスト感度が両眼で低下していました。ただし、視力はまったく低下していませんでした。ですからビジュアルスノウ症候群の患者の視覚障害は、どの眼科医でも測定が可能なコントラスト感度測定によって判定できる可能性があります。

 またビジュアルスノウ症候群の脳糖代謝では、両側の後頭葉下面の視覚連合領である舌状回の脳糖代謝低下が、ビジュアルスノウ症候群のほとんどの患者で観察され、その部分の機能不全が症状発現に関連している可能性があることが分かってきました。研究が進めばいずれ治療法も確立するでしょう。

清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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