進化する糖尿病治療法

女性は更年期以降に血糖値とコレステロール値が高くなる

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 女性で血糖値、血圧、コレステロールの数値がこれまで良好に保たれていた人も、45~55歳の更年期以降は数値が高くなりやすいので注意が必要です。

 女性が、ある時期まで生活習慣病の発症が少ないのは、女性ホルモンの働きによるところも大きいです。

 女性ホルモンであるエストロゲンには、血管内皮細胞で一酸化窒素を産生し、血管を柔軟にして拡張させる作用があります。血管の圧力が低下するので、血圧も下がります。また、エストロゲンは脂肪の燃焼を促す働きもあります。

 ところが更年期に入ると、エストロゲンの分泌が急激に減少するため、血管の柔軟性がなくなり血圧が上がります。

 脂肪がつきやすくなり、総コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、中性脂肪が増加し、HDL(善玉)コレステロールが減少します。

 これらはいずれも動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。

 ですから女性の皆さんは、更年期付近から、特に血圧、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の数値の変化に気を配って欲しい。年1回、健康診断を受けていればまだいいのですが、自営業や専業主婦の方などでは、長らく健診を受けていないという方もいます。血圧は家庭用血圧計で測定できますし、住んでいる市町村で行っている健診を受けるという手もあります。

 やや値は張りますが、健診にはない検査項目が盛り込まれている人間ドックを、自分へのプレゼントとして受けるのもいい。ただ、血圧やコレステロールの数値のチェックは「1回やればOK」ではなく、毎年やらなければならないので、継続できる方法を選んでください。

 これまでの食生活を見直すのも重要です。多少塩分が濃い食生活を送っていても、血圧が正常範囲内にとどまっていたのは、女性ホルモンのおかげです。更年期以降は、ぐっと塩分量を減らす生活を心掛けてください。

「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、1日の塩分摂取量の基準は男性7・5グラム未満、女性6・5グラム未満。日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019では、高血圧の人の減塩目標量は1日6グラム未満。WHO(世界保健機関)では1日5グラム未満としています。

 すでに高血圧なら6グラム未満、そうでなければ6・5~7・5グラム未満を目指しましょう。1日6グラムなら、品数が少ない朝、昼で1~2グラム、品数が多い夜で4~5グラムという感じです。

 どのくらいの量になるか、イメージがつきづらいと思いますが、食品の例を出すと、食パン6枚切り1枚で0・8グラム、塩サケ1切れ0・7グラム、アジの干物1枚1・4グラム、梅干し1個2・2グラム。

 外食に含まれている食塩量の目安としては、ざるそば2・7グラム、きつねうどん5・8グラム、コンビニの唐揚げ弁当3・3グラム、おにぎり(明太子)1個1・2グラム、ラーメン6グラム、ファストフードのハンバーガー1・5グラム(出典は「毎日の食事のカロリーガイド改訂版 女子栄養大学出版部」)。

 思っている以上に塩分量が多いものもあり、特に外食が続くと、あっという間に塩分摂取量が過剰になってしまうことが分かると思います。塩分量が少ないことによる物足りなさは、青ジソ、ネギ、ショウガ、ミョウガといった薬味をふんだんに料理にかけたり、柑橘類の果汁や酢など酸味を加えたり、唐辛子やこしょうといった辛味調味料を使ったりすれば、カバーできます。

 ナトリウム(塩分)の排出を促し、血圧の上昇を抑えるカリウムも意識して取りましょう。カリウムは、野菜、果物、キノコ類などに豊富に含まれています。

 塩分量は、慣れ。最初こそ「味が薄くておいしくない」と思うかもしれませんが、1カ月も続ければ、以前の食事は「しょっぱくて食べられない」となるかもしれませんよ。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

関連記事