大腸がんを確実に予防する 科学的に証明された2つのポイント

運動はほぼ確実にリスクを下げる
運動はほぼ確実にリスクを下げる(C)日刊ゲンダイ

 日本で大腸がんは増えており、臓器別の患者数では男性で3番目に、女性では2番目に多い(2017年)。死亡数では男性3位、女性では1位(19年)だ。「18年の死亡数予測は男女ともに米国を抜いています。日本人の大腸がん死亡率は世界トップレベルであり、その対策は十分ではありません」――こう指摘する京都府立医科大学生体免疫栄養学講座教授の内藤裕二医師に大腸がん予防と早期発見のために知っておくべきことを聞いた。

 大腸がん予防のポイントは2つだ。

「日本人を対象とした8研究に基づいて『大腸がんのリスクを下げることが、ほぼ確実』と評価されているのが運動です」

 運動で骨格筋から分泌される生理活性物質マイオカインは、脳神経系や代謝系などにさまざまな影響を及ぼす。

 マイオカインのひとつで、運動によって分泌量が増え、加齢や不活動で量が低下するものに「SPARC」と呼ばれるものがある。SPARCは「ACF(Aberrant crypt foci)」(異常陰窩巣)のアポトーシス(細胞の自殺)を誘導し、大腸がんの発現を抑制することが分かっている。ACFとは、肉眼的には正常に見える大腸粘膜だが、大腸がんの前がん病変と考えられているものだ。

 13年に内藤医師らによって発表された研究内容では、発がん物質を与えたマウスに、高強度・短時間・間欠的運動を実施したところ、大腸がんの前病変ACFの数が、運動をしていない群の半分以下になった。健康な若年男性を対象とした研究でも、高強度・短時間・間欠的運動を実施したところ、SPARCが増加した。

「これ以外にも、運動習慣が大腸がんに与える影響について研究した論文は複数あります。どのような運動をすべきかは、その人のそれまでの運動経験によって異なるので1種類には決められません。自分の体力に合った継続できる運動を選ぶようにしてください」

 もう1つのポイントが食事だ。

 国立がん研究センターなどの研究グループによる「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」では、大腸がんに関して、飲酒が「確実に」、肥満が「ほぼ確実に」、リスクを上昇させるとなっている。赤肉(牛、豚、羊)はリスクを上昇させる可能性ありだ。

 一方、食物繊維、カルシウム、魚由来の不飽和脂肪酸はリスクを下げる可能性がある。

「肉の中でも、加工肉は腸の中の硫黄代謝細菌に関係し、硫化水素を増加させ、炎症や遺伝毒性を引き起こして大腸がんのリスクを上げます。最近、注目を集めているのがブロッコリーやキャベツ、カラシナなどアブラナ科の野菜に含まれる成分グルコシノレートで、生物活性を持つイソチオシアネートといった化合物を形成し、その抗炎症作用で大腸がんを抑制します」

 ブロッコリーやキャベツは比較的リーズナブルで、一年を通して手軽に手に入る。大腸がん予防に大いに役立てたい。

■早期発見のためには検査が不可欠

 大腸がんは、予後が良いがんだ。早期発見、早期治療で95%以上が「完治」する。

「大腸がんは進行するまで自覚症状がないので、早期発見のためには大腸がん検診の受診が不可欠です。便潜血反応では早期がんは発見率が落ちるので、大腸内視鏡検査を強くお勧めします。40歳以上で、異常がこれまで見つかったことがない人であれば、5年に1度が理想的です」

 現在は検査技術が向上し、「大腸内視鏡=痛い」ではなくなってきている。

「人工知能(AI)で内視鏡の画像を解析し、検査中にリアルタイムでがんを高精度に判別するソフトも登場。がんの認識率は格段に上がっています」

 女性では、大腸がんはがん死亡率1位だが、大腸内視鏡検査を受ける人が増えれば、この数字は簡単に塗り替えられるだろう。早期発見・早期治療の術があるのだから、その恩恵が受けられる機会を逃すのは損だ。

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