平成27年度の厚労省の全国調査によると、男性不妊症の原因の第2位は「性機能障害」(13.5%)でした。性機能障害には「勃起障害」と「射精障害」があり、それぞれ6.1%と7.4%という結果でした。
では、具体的に性機能障害とはどのようなものでしょうか? 今回は勃起障害にスポットを当てます。
32歳のAさんは結婚して5年がたち、奥様からそろそろ子供が欲しいと持ちかけられました。交際している頃や結婚して間もない頃は、それなりに性交渉がありましたが、最近はご無沙汰で月に1回もありません。Aさんは「少しドキドキした」と言います。
それからほどなくして、奥様から「今日の夜あたりどうかな? 期待しているね」と言われました。その夜、久しぶりに性交渉に臨んだのですが……。
「あれ?あれ?今日はダメみたい」「疲れているのね。また今度ね」
妻の言葉に救われたAさんは、翌週も翌々週もチャレンジしましたが結果は同じ。思い悩んだ末、男性不妊外来を受診されました。
「別に女性に興味がないわけじゃないんです。妻と性交渉を行おうとすると、なぜか元気がなくなっちゃうんです。いけるかなと思う場合もあるのですが途中で萎えちゃうんです」
お話をうかがうと、特に病気などはなく、診察所見も異常は見当たりません。
「マスターベーションではどうですか?」
「1人でするときは何の問題もありません」
■妻だけEDは珍しいことではない
実はこうしたやりとりは、男性不妊症外来ではよくあります。私はAさんに次のように話しをしました。
「Aさんの事例は、男性不妊症で見られるEDではよくあることです。奥さんとの性交渉がプレッシャーに感じて、勃たなくなってしまうのです。身体が健康な証拠にマスターベーションでは大丈夫でしょう? 心因性によるケースが多いので、大抵は治りますよ」
男性は、結婚生活が長くなり、性交渉があまりない環境だと、奥様のことを1人の女性というより家族の一員として認識するようになります。すると性欲がわかなくなるのです。女性は、男性は単純でいつでも元気になるくらいに考えているかもしれませんが、とてもナイーブなのです。
神経には交感神経と副交感神経があることはご存じだと思います。交感神経は、興奮したり、緊張したりしたときに有意に働きます。緊張して汗をかいたり、トイレが近くなったりします。副交感神経はリラックスしているときに有意に働きます。元気になるにはまず、副交感神経が働かなければなりません。ゆったりしていないと元気にならないのです。
■ED治療薬で自信を取り戻せば薬なしでOK
男性の皆さんは経験ありませんか? 授業中に居眠りをしていて、起きたときに勝手に元気になっていたことを。それは居眠りできるくらいリラックスしているからこその現象なのです。性交渉で元気がなくなるのは、“またうまくできないのでは”という不安感で交感神経が有意になるからです。
治療は、PDE5阻害薬と呼ばれるED治療薬を使います。男性不妊症の勃起障害は、多くは心因性によるものなので効果は抜群です。平成27年度の全国調査でも、86%に効果が見られたと報告されています。
一度、元気になると自信を取り戻し、ED治療薬がなくても元気になるケースが多いです。Aさんも、カウンセリングとED治療薬のおかげで性交渉がスムーズにできるようになり、奥さんは無事に自然妊娠に至りました。
女性の皆さん、男性は見かけによらずナイーブなのです。プレッシャーを感じないで、妊活に励んでください。
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